山本隆弘が解説する全日本躍進の要因 「生命線」のサーブで好成績を収める

田中夕子

「誰が出ても変わらない」チームへ

オポジットとしての出場は久々の出耒田だったが、高いパフォーマンスを披露 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 ワールドリーグでは活躍した大竹壱青選手ですが、アジア予選ではやや疲労が目立ったことに加え、スロベニアやトルコのような高さのある相手に対してはコートの奥を狙って打っていたのに対し、高さのないタイやチャイニーズタイペイには下にたたきつけようとして、ネットにかけてしまうなどのミスが目立ちました。大竹選手にとっては不本意な結果かもしれませんが、これから経験を重ねていく中で改善されていく課題でもあり、それが分かっただけでも、現段階では収穫です。

 さらに、大竹選手と代わってオポジットに入った出耒田選手。大学時代はオポジットとして活躍していましたが、所属チームの堺ブレイザーズでもMBとしてプレーしてきたため、オポジットとして試合に出場するのは久しぶりでしたが、非常にいいパフォーマンスを発揮しました。高さだけでなくスピードもあるので、全体の攻撃リズムも良くなりましたし、何より、出耒田選手にとっても大事な試合で結果が出せたことは大きな自信につながるはずです。

 アジア選手権、ワールドグランドチャンピオンズカップ(以下、グラチャン)と大会が続く中、出耒田選手がオポジットとして計算できることが分かりましたが、さらに今回はワンポイント起用だった高橋健太郎選手もまた、オポジットができる選手です。

 誰かがいないとダメなチーム、スタイルが変わってしまうチームではなく、大竹選手、出耒田選手、高橋選手と誰が入っても変わらない形で戦うことができれば、これからのチームにとって大きな武器となるのではないでしょうか。

グラチャンは世界との距離を測る絶好の機会

まずは第一段階をクリアし、全日本男子はいよいよ世界へ挑む 【坂本清】

 自信を得るためには、まずは勝つことが大切。そういう意味でも、今季はワールドリーグでも勝ち越し、アジア予選でも全勝と、勝ちを重ねたことは素晴らしい成果です。とはいえ、ここまでは世界のトップチームと対戦しているわけではなく、相手も辛抱しなければならない場面でミスをしてくれるようなチームが多かったのも確かです。

 ブロックを含めたディフェンス面や、数字には出ないプレー、たとえばチャンスボールからの攻撃展開や、相手にチャンスボールを返さなければならない場面での状況判断など、挙げようと思えば課題はいくつも出てくるのが現状です。

 しかしながら、そんな状況も今は決して大きな問題ではありません。むしろそれ以上に、新体制で臨む最初の年は「本当に自分たちがやろうとしていること、やっていることが正しいのか」と半信半疑の中で戦っているため、「勝利」という結果が伴うことが何よりも大きな収穫であり、自信になります。

 7月24日に開幕するアジア選手権では、勝ち進めば世界トップクラスの1つであるイランと対戦する機会が巡ってくるでしょう。そして9月のグラチャンではブラジルやアメリカ、フランスなど、まさに世界のトップクラスと言うべき相手と対戦します。

 アジアでは勝ちにこだわることも大切ですから、アジア選手権は結果を残すことも重要ですが、世界で勝つことを視野に入れる以上、グラチャンは結果よりもまず、自分たちが今取り組んでいることがどれだけ世界に通用するのか――。世界と日本の距離を測る絶好の機会です。

 たとえ今は世界のトップと離れていたとしても、その距離が分かれば来年の世界選手権に向けて、さらには3年後の東京五輪へ向けて、何をどうやって詰めていけばいいのかが分かる。それを明確にすることが、最も重要なポイントになるはずです。

 まずは第一段階をクリアし、いよいよ世界へ挑む全日本男子。その進化や成長の過程を、僕も楽しみにしています。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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