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筒香嘉智がいま見ている世界
不振だった春先から復調の夏へ
開幕当初との状態の違いを、筒香は「体の中の“つながり”です」と説明する
開幕当初との状態の違いを、筒香は「体の中の“つながり”です」と説明する【(C)YDB】

 横浜スタジアムの一塁側通路の奥に、関係者用の食堂がある。


 ゲームセットが近づくと、横浜DeNAの番記者たちはそこに陣取って取材に備え、まずは壁に据え付けられたテレビで選手のヒーローインタビューを聞く。それから隣の部屋に移動して、囲み取材に臨むのが通例だ。


 食堂が静かなどよめきに包まれたのは6月28日、広島戦終了直後のことだった。


「おお……」と微かな声を漏らしたのは筆者一人ではない。その日のヒーローが発した言葉は、それだけ意外だった。


 画面には筒香嘉智が映し出されていた。3試合連続となる第10号2ランを放つなど、11対8の乱打戦で3打点。ホームランの手応えを問われて「普通です」、好調ですねと持ち上げられて「自分のことよりチームを勝たせられたことがうれしい」。そう真顔で語ったところまではいつも通りだった。


 インタビュアーが締めくくりに「夏に向けて一言!」とマイクを向ける。


 さあ、今回はどんなふうにかわすのだろう――そんな思いが頭をよぎった瞬間、筒香は短く、そしてはっきりと言った。


「もっと打ちます!!」


 予想外の威勢のよさだった。大声援に応える表情は、バットで結果を残せなかった開幕当初とは明らかに違うように見えた。

「矢印をまとめる」から次の段階へ

 筒香は昨年の夏ごろから、自信の打撃を語る際、「矢印をまとめる」という表現を使うようになった。スイングの際に発生する力の方向を「矢印」の形に記号化することで、打撃のメカニクスを視覚的に認識しようとしていた、と筆者は解釈している。「矢印をまとめる」とはすなわち、複数方向の力を最適に合成し、より大きな力としてボールに伝えることを意味していたのだろう。


 今年4月末に話を聞く機会があった時、そこを論点にすると、筒香はさらりと言った。


「それは去年ですね。今年は全然違います。矢印という感覚は、もう去年のオフからないですね」


 ならば今シーズン、自らが求める感覚にはどんな言葉が当てはまるのか。


「いまはないです。それは、自分のものにまだなってないからだと思う。だから(言葉で)表現できないんです」


 この時は言葉にできなかった感覚が新たな表現を得たのは約2カ月後。冒頭に紹介した、お立ち台で「もっと打ちます!!」と宣言したその日のことだ。


 ヒーローインタビューを終えて報道陣の前に姿を現した筒香は、開幕当初との状態の違いについて、こう説明した。

日比野恭三
日比野恭三
1981年、宮崎県生まれ。2010年より『Number』編集部の所属となり、同誌の編集および執筆に従事。6年間の在籍を経て2016年、フリーに。野球やボクシングを中心とした各種競技、またスポーツビジネスを中心的なフィールドとして活動中。

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