「私はすごく遅咲き」山根優衣 ケガ、同世代の活躍……世界水泳までの道

田坂友暁
 水泳の世界選手権(以下、世界水泳)が7月14日、ハンガリーのブダペストで開幕する。競泳(23日〜30日開催)の日本代表に選ばれた、全25選手の大会への思い、これまでのストーリーとは。全25回連載の第14回は、フリーリレーメンバーの山根優衣(セントラルスポーツ)を紹介する。

■山根優衣を知る3つのポイント
・身長166センチ体重48キロと細身ながら、推進力ある泳ぎを見せる。
・高校時代に膝を手術。大学時代も痛みに苦しんだ。
・代表エースの萩野公介、瀬戸大也は同い年。

膝の痛みを抱えた大学時代

高校、大学とケガに苦しんだ山根優衣。社会人1年目にして、初の世界水泳切符をつかんだ。写真は2016年アジア選手権 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 高校時代に手術をした膝のケガに苦しめられていた山根優衣。大学に進学しても、その影響は大きく、少しでも練習量が増えたり強度が上がったりすると痛みがぶり返してしまう。競泳選手の多くは、大学で記録を伸ばし、世界に羽ばたいていくことが多い。しかし、その大学時代のほとんどを辛抱強く、痛みがなくなるのを待つしかできなかった。さらに、萩野公介(ブリヂストン)、瀬戸大也(ANA)らゴールデンエイジと呼ばれる、1994年生まれの山根と同世代の選手たちは、どんどん世界で活躍。それを見ることしかできなかった自分が悔しかった。

 ただ、指導する岡田昌之コーチは山根を焦らせることもなく、岡田コーチ自身も焦ることなく、じっくりと調子に合わせてトレーニングを組み立ててきた。一緒に辛抱してくれる存在がいることは、山根にとって大きな支えになっていたことだろう。

着実に経験を積み重ね、初の世界水泳へ

2015年のユニバーシアードでは、4×100メートルフリーリレーで銀メダルを獲得。仲間とともに喜ぶ山根(中央) 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 その苦行に耐えきった山根がようやく世界への第一歩を踏み出したのは、大学3年生で迎えた2015年のユニバーシアード(韓国・光洲)だった。翌年のリオデジャネイロ五輪の代表権を獲得するチャンスは、確かにあったが手にすることはできなかった。

 すぐに次を見据えた山根は、16年のインカレの100メートル自由形で54秒86の自己ベストを更新。11月のアジア選手権にも代表として出場した。着実に経験と結果を積み重ねていき、今年6月の和歌山県選手権の結果で、4×100メートルフリーリレーの世界水泳代表権を初めて勝ち取った。


「私はすごく遅咲きで、大学に入って少しずつ伸びてきて、社会人1年目にしてようやく、という感じですが、やっぱり代表入りはうれしいですね。でも、自己ベストに届きませんでしたので、悔しい気持ちもあります」

 166センチの身長がありながら、体重は48キロと体の線はかなり細い。だが、水を捉えるセンスは抜群。そのストロークから驚くほど大きな推進力を生み出す。少しずつ、自分の体と向き合いながら成長してきた遅咲きの努力家が、世界を相手にどんな花を咲かせてくれるのか、楽しみにしたい。
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著者プロフィール

1980年、兵庫県生まれ。バタフライの選手として全国大会で数々の入賞、優勝を経験し、現役最高成績は日本ランキング4位、世界ランキング47位。この経験を生かして『月刊SWIM』編集部に所属し、多くの特集や連載記事、大会リポート、インタビュー記事、ハウツーDVDの作成などを手がける。2013年からフリーランスのエディター・ライターとして活動を開始。水泳の知識とアスリート経験を生かした幅広いテーマで水泳を中心に取材・執筆を行っている。

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