「もう一度、代表に入りたい」 高野綾が再びつかんだ世界水泳への切符

田坂友暁
 水泳の世界選手権(以下、世界水泳)が7月14日、ハンガリーのブダペストで開幕する。競泳(23日〜30日開催)の日本代表に選ばれた、全25選手の大会への思い、これまでのストーリーとは。全25回連載の第13回は、女子フリーリレーメンバーの高野綾(イトマン)を紹介する。

■高野綾を知る3つのポイント
・2012年ロンドン五輪、13年世界水泳などで日本代表入り。
・若手の台頭に押され、16年リオデジャネイロ五輪代表を逃す。
・今季は4月以降に3度も自己ベスト更新と勢いがある。

ロンドン五輪を経験も、若手の勢いに押され……

6月の和歌山県選手権で結果を出し、日本代表に返り咲いた高野綾(左)。写真右は、女子200メートル自由形決勝1位の青木智美 【写真は共同】

 水の抵抗が大きいようにも見える、独特な泳ぎで後半に強さを発揮するのが、高野綾の特徴だ。それもそのはず。初めて全国大会を制したのは、高校3年生の国際大会代表派遣選手選考会の400メートル自由形。最近は100メートルを得意とするスピードのある選手が200メートルで活躍するなか、まさに中長距離の選手として日本のトップで活躍し続けている。

 高野が初の主要国際大会代表となったのは、2012年の大学1年生で迎えたロンドン五輪。4×200メートルリレーメンバーとして選出され(400メートル自由形にも出場)、4年に一度の大舞台で決勝も経験した。さらなる成長が臨まれたが、13年の世界水泳(スペイン・バルセロナ)、14年のアジア大会(韓国・仁川)の代表入りを果たすも、そのあとに台頭してきた若手に押され、代表入りから遠ざかってしまった。

戻った強さ 4月以降に3度の自己ベスト更新

再びつかんだ日本代表の座。高野(左)はリオデジャネイロ五輪を逃した悔しさを、今大会にぶつける。写真は2015年夏季ユニバーシアード 4×200メートルフリーリレー表彰式 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 そして2度目の五輪出場を目指した16年の日本選手権。200メートル自由形で持ち味であった後半の泳ぎにキレが出ず、力を出し切れずに5位となり代表ならず。大学を卒業し、社会人となっていた高野は、このまま引退するかに思われた。

 だが今年、後半に強い高野が帰ってきたのだ。4月の日本選手権で1分58秒82の自己ベストをマークすると、5月のジャパンオープンでは、1分58秒77とさらに記録を更新。さらには6月の和歌山県選手権で、もう一度自己記録を更新。1分58秒55で、13年以来の世界水泳代表に返り咲いた。

「リオデジャネイロ五輪に行けなかったことが本当に悔しかったです。その悔しさを忘れず、もう一度日本代表に入りたい、という気持ちで前向きに頑張ってきました」

 今年の日本代表で、ロンドン五輪から活躍を続けているのは、高野を含めて5人だけ。伸び盛りの若い選手たちが多いなか、世界大会の経験を積んでいる高野は、今のチームにとって必要な存在だ。得意な後半の粘りを生かし、しぶとい高野の泳ぎが世界の舞台で見られることだろう。
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著者プロフィール

1980年、兵庫県生まれ。バタフライの選手として全国大会で数々の入賞、優勝を経験し、現役最高成績は日本ランキング4位、世界ランキング47位。この経験を生かして『月刊SWIM』編集部に所属し、多くの特集や連載記事、大会リポート、インタビュー記事、ハウツーDVDの作成などを手がける。2013年からフリーランスのエディター・ライターとして活動を開始。水泳の知識とアスリート経験を生かした幅広いテーマで水泳を中心に取材・執筆を行っている。

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