柏が目指すアカデミーと個性の融合 未知数ではある、だが伸びしろは期待大

鈴木潤

10戦無敗を記録し、躍進した前半戦

第17節の鹿島戦には敗れたが、8連勝を含む10戦無敗を記録した柏の躍進は、前半戦の大きなトピックとなった 【(C)J.LEAGUE】

 7月2日に行われたJ1リーグ第17節、柏レイソルは鹿島アントラーズとの激しい撃ち合いの末、2−3で敗れた。セレッソ大阪が勝ったために首位からは陥落したものの、8連勝を含む10戦無敗を記録した柏の躍進は、前半戦の大きなトピックとなった。

 鹿島は柏のビルドアップの起点を封じるべく、高い位置からプレスを仕掛け、中谷進之介、中山雄太、手塚康平によるパス回しを封じにかかる。下平隆宏監督は、アカデミー育ちの彼らが鹿島のプレッシャーをかいくぐり、ボールを保持する時間帯を増やすことで柏が主導権を握るプランを描いていた。

 2−1で勝利を収めた第11節のFC東京戦では、彼らが相手のプレッシャーをことごとく外し、効果的な攻撃へとつなげた。その際、下平監督は「相手がどこにポジションを取って、どこにスペースがあって、どこにフリーの選手ができてということを、アカデミーのころから理解している選手が多い」と振り返っていた。

 だが、鹿島戦での指揮官のコメントは対照的だった。

「実際にボールを持てて崩せているシーンもあったので、それが頻繁に出せないのかと思っていた。中盤であればレオ・シルバ選手の見えないプレッシャーがあったのだろうと感じていたが、そういうのにビビらず、それでもボールを動かし、スペースを見つけ、チャンスを作ることはもっとできたのではないかと悔いが残る。そこは経験を積み、自信がついていけばできる部分だと思う」

目標の1つだった「8+3」が現実に

現在の柏の中核を担うのはアカデミー出身の選手たちだ 【(C)J.LEAGUE】

 一方、中谷は「中盤でフリーマンを作れていたので、プレッッシャーはそんなに気にならなかった」と言い、手塚も「流れ的には悪くなかった。鹿島のプレッシャーは嫌ではなかった」と試合を振り返った。彼ら自身もどこにスペースがあり、2列目の中川寛斗や武富孝介がボールを受けに降りてくるアクションを視界には捉えていたと思われる。

 従って下平監督の分析どおり、前年王者の繰り出す目に見えない圧力が彼らのプレーを微妙に狂わせた部分が大きかったのだろう。中谷と手塚は21歳、中山は20歳。鹿島戦の経験は、若い彼らの成長をさらに促す糧となるはずだ。

 上記3人に加え、現在の柏の中核を担うのはアカデミー出身の選手たちである。10戦無敗の間、アカデミー出身の選手は常時7、8人がスタメンに名を連ね、今回の鹿島戦も、クリスティアーノ、伊東純也、小池龍太を除く8人がアカデミー出身選手だった。

 今から5年前の2012年。当時、U−18を率いていた下平隆督は、アカデミーの目標の1つとして「8+3」というキーワードを挙げていた。アカデミー出身選手8人に、3人の外国籍選手を加えた11人でトップチームのメンバーを構成することを意味する言葉である。それは決して排他的な考えではなく、トップチームに優秀な人材を輩出し続けなければならないという育成コーチとしての義務感から、アカデミー全体が抱いた共通の目標だった。

 そして、柏はその「8+3」に到達し、今こうしてトップチームが優勝争いを繰り広げることで、十数年をかけて育成に力を注いだ成果をピッチ上で発揮している。事実、先述のFC東京戦後の会見では、下平監督も「土台は全てアカデミーにある。それが形になってきている」と下部組織の存在をチームが好調である要因に挙げた。

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著者プロフィール

1972年生まれ、千葉県出身。会社員を経て02年にフリーランスへ転身。03年から柏レイソルの取材を始め、現在はクラブ公式の刊行物を執筆する傍ら、各サッカー媒体にも寄稿中。また、14年から自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信している。

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