サッカー“ヘタクソ代表”三木健の挑戦 欧州で奮闘する異色の左SBが目指すもの

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スロベニア2部でプレーする左SB

自身をサッカー“ヘタクソ代表”と称す三木。なぜ欧州でのプレーにこだわるのか 【写真提供:三木健】

「これまで選抜というものに一度も選ばれたことがないですし、中高、社会人とやっていく中で自分よりうまい選手はゴロゴロいました。自分はサッカーがヘタクソなんだろうなって思いますね。

 でも本当にサッカーがやりたいけれど、評価されなかった選手にはこういう選択肢もあるんだぞというのを示したい」

 これは2016−17シーズン、スロベニア2部のNKクルカでプレーした三木健(たけし)の言葉だ。自身をサッカー“ヘタクソ代表”と称す彼は、これまでシンガポール、タイ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、スロベニアと5カ国8クラブでプレー。そのすべてで代理人に頼ることなく、自ら交渉し、テストを受けて契約をつかみとってきた。

 ポジションは左サイドバック(SB)で、左足のキックの精度とスタミナが売り。時にウイングで起用されるほどの攻撃力を武器に、今季はスロベニアカップ準々決勝で1ゴール1アシストを記録。2部のクラブながらベスト4に進出したクラブの原動力となった。

 しかし、NKクルカとの契約は6月で終了した。夏には再び欧州へ渡り、テストを受けながら来季の所属先を探す。現在31歳、「CL(チャンピオンズリーグ)かEL(ヨーロッパリーグ)に出場することが夢」だと語る男は、なぜ欧州でのプレーにこだわるのか。異色のキャリアを持つ男の挑戦に迫った。

ボスニア1部で感じた可能性

25歳のときに目標だった欧州1部リーグに到達したが、三木はそこで満足しなかった 【スポーツナビ】

 三木が海外でのプレーを志したのは21歳のとき。それまでは街クラブに所属し、Jリーグを目指していたが「箸にも棒にもかからなかった」(三木)という。意を決した三木は国外に目を向け、アルビレックス新潟シンガポールのテストに合格して海外進出を果たす。

 シンガポールでは左SBの2番手で出場機会は限られていたが、「25歳までに欧州の1部でプレーしたい」という思いを胸に秘めながら研鑽(さん)を積んだ。その後、タイリーグを経て25歳のときにボスニアのFKスロボダ・トゥズラのテストに合格。日本でプロにもなれなかった男が、念願の欧州1部リーグにたどり着いた。ところが、三木はそこで満足せず、新たな野心を抱く。

「25歳までに(欧州の)1部でプレーできなかったら引退、プレーできたとしたらそこで満足するだろうと思っていました。ところが、1部でやってみて、まだ上に行けるんじゃないかって(思った)。僕はそこでもチームの2番手だったんですけれど、“彼”とやりながら『そこまでびっくりするほどの差はないな』と思いました」

 彼とはアルミル・ベキッチのことで16年6月のキリンカップではボスニア代表の一員として来日し、日本戦で左SBとして出場していた人物だ。チームの中心選手としてプレーし、代表にも名を連ねる選手とのポジション争いに手応えをつかみ、三木はより高いレベルで戦いたいと思うようになった。

「おそらくあのときに、『これは無理だな』と感じていたら現役を辞めていたと思います。けれど、自分の中でこのぐらいのレベルなんだなと測れる位置に(ベキッチが)いた」

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