マクラーレンが抱える新旧体制のギャップ 今宮純のF1ザ・ショウダウン
2017年からの変更となったオレンジ&黒のマシンカラーリング 【LAT】
新体制でいかだレースが復活?
その94年に行われた最後の「いかだレース」でジョーダンが4連覇を達成。2位グッドイヤー・チーム、3位ベネトン、4位リジェ、5位ラルース、6位シムテックだった。94年のF1カナダGPでポールトゥウィンを飾ったミハエル・シューマッハのベネトン以外はそう、マイナーなプライベートチーム(失礼)が上位を独占した。
ビッグチーム勢をやっつけるぞと、予選前日に手作りいかだを準備しやる気十分。妙におかしな雰囲気が盛り上がっていた。
「そんなことやっている場合か」
昨年11月にマクラーレン・グループの代表職を解任されたロン・デニス氏ならば、いかだレース参加を許可しただろうか。
現在のマクラーレンのボス、アメリカ人気質のブラウン氏だからこそ認め、メンバーにボート競技の五輪メダリストを起用、必勝を期していた(と想像する)。
デニス体制の旧マクラーレンからブラウン体制の新マクラーレンへ。何もかもが変わった。
そして誰もいなくなった…
マシンとパワーユニットの問題に悩まされ、カナダGP時点でいまだノーポイントのフェルナンド・アロンソ 【Mamoru Atsuta】
オフに話題になったオレンジと黒へのカラーリング変更も、そのイラスト案を目にした瞬間に破り捨てたことだろう。
80年代の“赤白マールボロ・カラー時代”も私服姿は地味でシックなファッションでいたデニス氏、自分のマシンをオレンジ&黒にするとは到底思えない。
生え抜きに近い側近の部下たちが次々とボスから離れていった。2013年2月にテクニカルディレクター職のパディ・ロウ氏、14年5月に現場リーダーを務めたマーティン・ウイットマーシュ氏、同年10月にはスポーティングディレクターのサム・マイケル氏も……。
16年11月には40年以上在職したマーケティング部門のエクレム・サミ氏、12月には新任間もないCEOのヨースト・カピート氏も去った。
そして“誰もいなくなった”後、現在のブラウン主導体制ができあがった。
昔のボスと盟友関係にあったのがマンスール・オジェ氏、サウジアラビア出身の大富豪(実業家)だ。今年バーレーンGPはもちろんモナコGP、カナダGPと以前より頻繁に現場に姿を見せている。新リーダーとの2ショットが国際映像にもちょくちょく映し出される。
彼はマクラーレンの25%株主であり、バーレーン政府系投資会社の「マムタラカト・ホールディング」が50%筆頭株主。両者あわせると持ち株は4分の3、決定権を行使できる。