最終局面を迎えるアメリカズカップ フォイリングが生んだスピード革命

平井淳一
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提供:スポナビライブ

世界最高峰のヨットレースと呼ばれる理由

北大西洋に浮かぶ英国領バミューダで開催されているアメリカズカップ。決勝は防衛艇アメリカ(奥)と挑戦艇ニュージーランド(手前)が戦う 【(C)ACEA2017/Photo Ricardo Pinto】

 バミューダで開催されている世界最高峰のヨットレース「第35回アメリカズカップ」が最終局面を迎えた。6月17日(日本時間18日)から始まる決勝で対決するのは、オラクル・チームUSA対エミレーツ・チームニュージーランド。4年前に行われた前回大会と同じ組み合わせである。

 アメリカズカップは防衛艇と挑戦艇が1対1で戦う。各分野の最新テクノロジーを駆使して、ヨットデザイナー、エンジニア、ボートビルダーが最新艇を作り上げ、世界最高の技量を持つセーラーが競うヨットレース。これが世界最高峰のヨットレースと呼ばれる理由だ。

 第35回大会の防衛艇は2013年大会で勝利した米国で、挑戦艇には5カ国が名乗りを上げた。挑戦艇を決める予選シリーズは2015年から世界を転戦して開催され、最終予選はバミューダで5月後半から約3週間にわたって行われた。この最終予選で、日本、スウェーデン、イギリス、フランスを破ったニュージーランドが挑戦艇代表に選ばれた。

フォイリングが新たな魅力を吹き込む

フォイリングによりスピードが飛躍的に加速。予選ではエミレーツ・チームニュージーランドが前のめりに転覆する事故もあった 【(C)ACEA2017/Photo Gilles Martin-Raget】

 前評判では米国有利といううわさもあるが、実際はどうなのか? 勝敗の鍵を握るのが、フォイリングと呼ばれる最新艇の性能にある。第35回大会では、全長約15メートルのアメリカズカップクラスと呼ばれるフォイリング・カタマラン(双胴艇)が採用されている。

 フォイリングとは前回大会から登場したセーリングで、水中翼を使って水面から浮き上がって走るというもの。水の抵抗がほとんどなくなるために、約50ノット(時速92キロ)の加速が可能になった。このフォイリングが、アメリカズカップに新たな魅力を吹き込んでいる。

 スピード対決は常に危険と隣り合わせだ。予選シリーズでは、スタート前の接近戦で衝突して大穴が空いたり、選手が海に落水するシーンも見られた。また、大事故につながりかねないピッチポールする(前転するように船が転覆する)場面もあり、観戦するセーリングファンは、これまでのアメリカズカップとは比較できないほど興奮していることだろう。

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著者プロフィール

ヨッティング・フォトジャーナリスト。「バルクヘッドマガジン」編集長。1969年生まれ。学生時代にセーリングを始め、雑誌編集部を経て、1999年よりジャーナリストとして独立。自身もセーラーとして、日本〜グアム航海、世界選手権出場ほかヨットレースに多数出場。リオ五輪国際セーリング連盟認定フォトグラファー。

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