最終局面を迎えるアメリカズカップ フォイリングが生んだスピード革命

平井淳一
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提供:スポナビライブ

ハイスピードをもたらすダガーボード

ニュージーランドのピーター・バーリング。リオ五輪では49er級で金メダルを獲得した勢いに乗る最年少ヘルムスマン 【(C)ACEA2017/Photo Ricardo Pinto】

 予選シリーズが終わってはっきりしたのは、ニュージーランドの優れたフォイリング性能とボートスピードである。フォイリングを可能にする水中翼(ダガーボード等)とそれを操るシステムは、チームごとに極秘に開発されてきた部分だ。

 ニュージーランドのダガーボードは、先端が内側に沿っているのが特長で、予選シリーズを見るかぎりでは、特に風の弱い場面で威力を発揮していた。ニュージーランドにハイスピードをもたらすダガーボードは、アメリカズカップを戦う上で大きな武器となるだろう。

経験値、総合力で勝る防衛艇のチームUSA

アメリカの艇長、ジミー・スピットヒル。前回大会では1対8の負け越しから、大逆転勝利をもたらした伝説のスキッパー 【(C)ACEA2017/Photo Ricardo Pinto】

 一方、米国の優位性は総合的に高い戦闘力にある。潤沢な資金と人材、開発力は随一で、米国も参加した予選シリーズでは総合1位を獲得している(この結果で1勝に値するボーナス得点が与えられた)。ニュージーランドと手合わせした2度のレースで2度勝利していることからも、米国の戦力に不足はない。

 米国チームの要となるのは、前回大会でもスキッパー/ヘルムスマン(艇長/操舵手)を務めたジミー・スピットヒル(AUS・37歳)と、タクティシャン(戦術担当)のトム・スリングスビー(AUS・32歳)である。

 ニュージーランド戦ではスタート前に押さえ込み、そのリードを保ったまま逃げ切るという戦い方で勝利している。スピードに勝るニュージーランドを戦術で封じ込めたという形だ。ニュージーランドはヘルムスマン最年少ピーター・バーリング(NZL・26歳)が舵を握っていて、勝負の駆け引きでは経験豊富なアメリカチームに一日の長がある。

カップを手にするのは? 7戦先取で勝利

 また、米国は挑戦者代表を決める最終予選には出場する必要がなかったため、その間にニュージーランド艇の走りや戦い方を分析して、ダガーボードを改造(=ボートスピードの改良)している可能性もある。スピードという武器が削がれた時、ニュージーランドは不利になるかもしれないが、こればかりは、実際にはじまってみないと分からない。

 アメリカズカップは6月17日に始まり、先に7勝したチームが勝者となる。米国がカップを保守するのか、ニュージーランドが奪還するのか? 実力は拮抗していると見て間違いないだろう。世界中のセーリングファンが注目するアメリカズカップの熱気は、最高潮に達しようとしている。
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6月18日〜19日、6月25日〜28日
防衛艇と挑戦艇代表によるマッチレース

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著者プロフィール

ヨッティング・フォトジャーナリスト。「バルクヘッドマガジン」編集長。1969年生まれ。学生時代にセーリングを始め、雑誌編集部を経て、1999年よりジャーナリストとして独立。自身もセーラーとして、日本〜グアム航海、世界選手権出場ほかヨットレースに多数出場。リオ五輪国際セーリング連盟認定フォトグラファー。

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