VVV藤田俊哉コーチインタビュー<後編> 契約延長か新たな挑戦か、悩む心境を吐露

中田徹

フットボールへの愛情とステータス

VVVのハイ・ベルデン会長(右)。藤田コーチと1部昇格の約束をしていた 【VI-Images via Getty Images】

――日本だと、親が亡くなっても「天国にいる親はきっと俺に試合に出てくれと言っている」と試合に出て、それが美談になる。

 日本でもそういうのは全くしないほうがいいと、僕は考えている。俺もたいがいフットボールが好きだよ。だけど、やっぱり家族とか親とかは、フットボールと比較をしない。絶対に家族、親をとる。試合? またあるじゃん。

――確かに。

 僕も人生の「はかなさ」が分かる歳(45歳)になった。3年前、義理の母が亡くなった時がそうだった。妻とお義母さんが電話で話した数時間後に突然、亡くなってしまった。お義母さんはとても元気で、2週間後にはヨーロッパに遊びに来る予定を立てていた。ともかく、クラブに「帰らせてくれ」と言って、大急ぎでその日の内に家族4人で日本に帰った。

 同じ時期にジュビロ磐田の社長だった荒田忠典さん(2014年11月11日逝去)も亡くなって、お葬式に行った。荒田さんほどサッカーを愛した社長はいなかった。スケールの大きな社長だった。この前、誰かが書いたコラムで「Jリーグの社長が就任する時、『私はサッカーをあまり知らないので……』とあいさつする人がいるのが不思議」というのを読んだけれど、荒田さんはそれとは対照的な方だった。

――オランダのクラブのトップも必ずしもサッカーをやっていたわけではないけれど、少なくともサッカーは知っている。

 こっちの人は、フットボールへの愛情があるし、クラブの会長とか社長に就任することは非常にステータスのあること。

――ハイ・ベルデン会長は小さい時はサッカーをやってましたが、ベースはビジネスマンですよね。

 ハイさんは、サッカーがとても好き。そして、この町が好き。フェンロー育ちで、フェンローという町にあるVVVというサッカークラブが好き。だからVVVフェンローに関わるのがうれしくないわけないよね。自分はフェンローで稼がせてもらい、そのお金をVVVに使う。ハイさんにとって、そんな幸せな人生ってないんだろうなと感じる。

VVVでの目的は達成したが……

契約延長か、それとも新しい挑戦か。藤田コーチは悩んでいる現在の心境を語った 【中田徹】

――さて、VVVはエールディビジに昇格しました。藤田さんはチームに残りますか? それとも新たなチャンレジに挑みますか?

 正直まだ分からない……。オランダリーグの当初の目的としてハイさんと約束したのは「何としてでもエールディビジに昇格しよう」ということ。それは達成した。VVVはエールディビジでプレーするけれど、優勝を狙えるようなクラブではないことも事実。

――それは難しい。

 当初の約束は3年半で果たし、ゴールに来たのも事実。だから俺は新しい挑戦をする時期なのかという悩みもありながら、新しいオファーをVVVからもらったといううれしさもある。だから悩む。これが本音だよね。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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