堂安、市丸、初瀬のG大阪トリオが機能 U−20W杯のイタリア戦をデータ分析

清水英斗

グループ3位で決勝トーナメント進出

イタリア戦は2点を先行されるも、日本が堂安の2ゴールで追いついて2−2の引き分けに終わった 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 U−20ワールドカップ(W杯)グループステージ第3戦はU−20日本代表がU−20イタリア代表と2−2で引き分け。日本はグループ3位での決勝トーナメント進出が決まった。

 イタリア戦の全体ポゼッション率は59%。日本がボールを支配する試合だった。ただし、異彩を放つ時間帯は後半76〜90分だ。この終了間際だけは、日本のポゼッション率が40%に急落している。理由はもちろん、2−2の状況で日本とイタリアの利益が合致し、ゴールを目指すのをやめたこと。イタリアが無為にボールを持ちつづけ、終了のホイッスルを待った。

 24チーム中16チームが決勝トーナメントに進出する規定のため、グループ3位でも全6グループ内の比較により上位4チームは勝ち抜けとなる。グループDの日本は、2−2に追いついた時点で、グループAの3位アルゼンチンと、グループBの3位ドイツを上回る状況になり、無理に勝ち点3を目指す必要がなくなった。もちろん、イタリアも2位突破で問題ない。他グループの結果次第にもかかわらず、同日同時刻のキックオフではないため、先に試合を終えているグループAとBにとってはアンフェアな状況になった。

日本がゲームを支配、鍵を握った堂安

【データ提供:データスタジアム】

 この例外的な時間帯を除けば、ほぼポゼッション率60%以上を記録した日本。もちろん、ボールを持っていること自体はスコアに直結するものではない。しかし、シュート数や敵陣ペナルティーエリア内プレー数を見ると、前半16分以降は、日本がコンスタントに敵陣ペナルティーエリアへ侵入し、シュートを打っていることが分かる。逆にイタリアは、前半16分以降のシュート数がゼロ。日本のペナルティーエリアにも、ほとんど行けていない。つまり、日本は有為なポゼッションで、ボールだけでなく、ゲームを支配したと評価できる。

 鍵を握ったのは、右サイドハーフの堂安律だ。「4−1−4−1」で守備をするイタリアに対し、中に入ってアンカー1枚の脇にポジションを取り、縦パスを受けて攻撃の起点となった。前半22分、その堂安が遠藤渓太のクロスからゴールを挙げると、勢いを増す日本に対し、イタリアは24分にシステムを「4−4−2」にチェンジ。水平な3ラインに変え、堂安に与えていたスペースを消した。さらに、堂安にフリーでボールを持たせないように、サイドバック(SB)の14番ジュゼッペ・ペッツェーラがかなり前に出て深追いし、激しくマークしてきた。

左右の攻撃バランスがほぼ同じになった理由

イタリア戦の先発メンバー。右サイドの堂安、市丸、初瀬はガンバ大阪所属 【スポーツナビ】

 この形になると、日本の鍵を握るのは、SBとボランチだ。イタリアが「4−1−4−1」のときは、相手ウイングとインサイドハーフにかみ合う形だったが、「4−4−2」になると、マークが浮きやすい。ここで存在感を増したのが、市丸瑞希と初瀬亮だった。イタリアの堂安への警戒を逆手に取り、その手前でフリーになった市丸がパスの展開役になり、初瀬はオーバーラップしてイタリアを混乱させた。また、2トップの岩崎悠人も、堂安を深追いする相手SBの裏へ流れ、うまく起点になっている。

日本代表のプレーエリア別のヒートマップ 【データ提供:データスタジアム】

 前半31〜45分は、日本が4本のシュート、敵陣ペナルティーエリア内のプレー数が5回と、ボールを持ちつつ、特に多くのチャンスを作り出した。相手の布陣変更に対応し、日本は柔軟に攻め手を繰り出している。南アフリカ戦とウルグアイ戦では、左サイド寄りになる傾向があった日本だが、イタリア戦では左右の攻撃バランスがほぼ同じになった。これは堂安、市丸、初瀬のガンバ大阪トリオが機能したためだろう。

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著者プロフィール

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合の深みを切り取るサッカーライター。著書は「欧州サッカー 名将の戦術事典」「サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術」「サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材では現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが楽しみとなっている。

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