堂安、市丸、初瀬のG大阪トリオが機能 U−20W杯のイタリア戦をデータ分析

清水英斗

日本のポゼッションを支えた中山と冨安

キャプテンを務めた中山(写真)と冨安のCBコンビは守備だけでなく、ビルドアップでも貢献 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 このままでは守り切れないと考えたのか、1−2でハーフタイムを迎えた後、後半のイタリアは「4−1−4−1」に戻した。しかし、それにより、再び中央にスペースを得たのが堂安だった。後半5分、田川亨介のポストプレーからボールを受けた市丸は、オーバーラップする初瀬へ展開するような姿勢を取りつつ、堂安へ縦パス。アングルで相手をだます、市丸の普段使いのパスだ。

 ファーストタッチが良かった堂安は、フリーでペナルティーエリアへドリブルで侵入し、相手のすき間へ突破。イタリアDFはファウルを恐れ、がっつり当たれない。堂安は見事な突破からシュートを流し込み、2−2となる同点弾を挙げた。

 あっちこっちとイタリアを修正に走らせ、それでも柔軟に違う形を繰り出す日本のポゼッションは、非常に質が高い。それを支えたのは、センターバック(CB)の中山雄太と冨安健洋の安定した配球だ。彼らはドリブルやポジショニングで、相手センターFW(CF)の裏へ入ることを恐れず、果敢にビルドアップの起点を作った。ミスも少なく、すばらしい出来だった。

オフサイドが取れない日本の課題

南アフリカ戦では初瀬が残ってオフサイドが取れずに失点。大会を通じて日本はライン崩れのミスが続いている 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 逆に問題があったのは、守備のディテールだ。前半3分の失点場面は、CFの9番アンドレア・ファビッリに飛び出しを許し、アーリークロスから7番リッカルド・オルソリーニに押し込まれた。日本はCBの中山と冨安が、ファビッリをオフサイドポジションに置いた“つもり”でいたが、逆サイドではウイングのオルソリーニのマークに引っ張られたSBの杉岡大暉が残っており、オフサイドは取れず。

 ボールがフリーなのにラインを高い位置に保つCBに問題があるのか、あるいはマークに意識を引っ張られるSBに問題があるのか。少なくとも、逆サイドにいるときのSBは、もっとラインに気を配るべきだろう。いずれにせよ、この大会を通じて日本はライン崩れのミスを犯しており、南アフリカ戦では初瀬が残る形で、オフサイドを取れず失点した。その問題が再発した格好だ。

 イタリアはアーリークロスへの判断が早く、同様のシーンは他にも見られたので、日本の弱点を狙っていたのだろう。2失点目のFKも、ファーサイドからオルソリーニが飛び出してマークを引っ張り、日本のラインを押し下げたところで、ニアサイド側へ17番ジュゼッペ・パニコが飛び出してきた。やはりオフサイドは取れず、そのままワンタッチで沈められている。決勝トーナメントでは、日本が注意するべきポイントだ。

※本スタッツデータは大会公式とは異なる場合があります。

(グラフィックデザイン:相河俊介)

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著者プロフィール

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合の深みを切り取るサッカーライター。著書は「欧州サッカー 名将の戦術事典」「サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術」「サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材では現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが楽しみとなっている。

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