【ボクシング】ハプニングを乗り越え世界王座を奪取 比嘉大吾、具志堅会長へ恩返しのKO劇

スポーツナビ

プロデビューから13連続KOで世界王座奪取

プロデビュー以来13連続KOのパーフェクトレコードで世界王座戴冠となった比嘉大吾(右) 【写真は共同】

 沖縄から上京して4年目の21歳の若者と、テレビのバラエティー番組でお茶の間の人気者である具志堅用高会長の熱い抱擁に、リング上が幸せに包まれた――。

 比嘉大吾(白井・具志堅スポーツ)は20日、東京・有明コロシアムで行われたプロボクシングのWBC世界フライ級タイトルマッチに挑戦。前日の計量失敗で王座剥奪となり、チャンピオンではなく前王者という肩書きとなったファン・エルナンデス(メキシコ)に、6回2分58秒でTKO勝利し、13戦目で世界王座を奪取した。それも日本人初となるプロデビュー以来13戦連続13KOでの世界王座戴冠という快挙だった。

 白井・具志堅スポーツジムの具志堅会長が沖縄・宮古工高の比嘉を直接スカウトして4年。試合直前には具志堅会長から「勝って沖縄に一緒に帰ろう」と声をかけられた比嘉は「会長にちょっとは恩返しできたかな」と、その目からはうれし涙がこぼれた。

1Rは相手ペースもあわてず

第1Rはエルナンデスのアウトボクシングに苦しめられるところもあったが、あせりはなかった 【赤坂直人/スポーツナビ】

 この試合で比嘉は6度のダウンを奪うなど、ブルース・リーのような逆三角形の鍛え抜かれた広背筋や、階段ダッシュなどで野木丈司トレーナーにしごかれた強靭な下半身から繰り出される強打を存分に発揮した。それに加えて、野木トレーナーが「ミスがなかったこと」を勝因に挙げたが、セコンドの指示を徹底し、時には冷静に状況を把握するボクシングIQの高さがベルト奪取につながった。

 1R、エルナンデスはオーソドックスとサウスポーを頻繁にスイッチ。スピードを生かして左右に動き回り、インファイトに持ち込みたい比嘉に鋭い左右のアッパーを浴びせてきた。映像を何度も見て研究してきたが、「技術は相手が上で、映像を見ていてもパンチをもらってしまった。1Rのポイントは絶対取られていて、このままではやばいと分かっていた」というほど、メキシカン特有の独特な軌道のパンチに嫌な空気が流れた。

 ただ、比嘉はあわててはいなかった。「1Rのああいうボクシングを見せられるとセコンドもあせるじゃないですか? だから1R終了時点で『つかまえられます』とセコンドには言いました」と語る。その裏にはセコンドを安心させるとともに、世界戦に向けてとことん追い込んだ練習をやってきた自信があったからだ。

左ジャブを基点に展開を打開

2R以降、左ジャブで展開を打開していき、先にダウンを奪う 【赤坂直人/スポーツナビ】

 比嘉は2Rから左ジャブを多用する。戦前から「左ジャブをいっぱい当てて自分のペースに持ち込みたい」と試合のポイントを挙げていたが、実際リングで対峙した印象でエルナンデスとの距離が予想以上に遠かったことから、左ジャブで展開を打開しようと試みる。結果、エルナンデスの動きをけん制し、ヒットアンドアウェーで前に出てきたところを左フックで迎撃して最初のダウンを奪った。

 ここでも冷静だったのはキャリア39戦(36勝26KO3敗)でKO率6割を超えるエルナンデスの強打を警戒し、セコンドに「あわてて行かなくていいか」としっかりと確認をしていたところ。実際、1Rにパンチをもらって「パンチ力にびっくりした」と振り返っていたが、ここで一気呵成に攻めていたら、老かいなエルナンデスのカウンターのえじきになっていたかもしれない。

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