【ボクシング】ハプニングを乗り越え世界王座を奪取 比嘉大吾、具志堅会長へ恩返しのKO劇

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セコンドの指示通りの攻め

4R時点でのポイントを見て、「どんどん詰めていこう」という指示を受け、怒涛のラッシュ。6Rで試合を決めた 【赤坂直人/スポーツナビ】

 その後、4R終了時点の公開採点は38−37、37−38、38−38のドロー。アウトボクシングのエルナンデスに点数を取られていたことから、野木トレーナーは「どんどん詰めていってボディを打とう」とKOへのゴーサインを出す。比嘉は5R、早速指示通りに強打を恐れず間合いを詰めて強烈なボディやアッパーを繰り出すと、左フックで2度目のダウンを奪った。

 さらに勢いづいた比嘉は6Rも接近戦に持ち込み、ボディ、フック、アッパーのラッシュ。このラウンドだけで右アッパーで3度ダウンを奪う。そして残り10秒を切ったところで、右フック、左ボディ、右アッパーの連打でエルナンデスをマットに沈め、レフェリーはカウントを数えず試合を止めた。

 会長への恩返し、苦しい減量、25年ぶりの沖縄出身の世界王者への期待、目標としてきた21歳での世界王座奪取など、相当なプレッシャーがのしかかり、1週間前には夜中に突然パニック障害のような発作が起こったという。前日には王者エルナンデスの計量失敗というアクシデントもあった。数々のハプニングを乗り越えての戴冠は大きな価値あるものとなった。

強打とお茶目な性格のギャップ

沖縄出身の明るい性格は具志堅会長譲りの部分も。強さと明るさを兼ね備えたチャンピオンに今後は注目だ 【赤坂直人/スポーツナビ】

 試合での精悍(せいかん)な顔つきとは違って、素顔は沖縄出身らしい明るい性格の持ち主だ。地上波でも流れた勝利者インタビューでは「仮歯が抜けてびっくりでした」と笑わせ、試合後の会見でも開口一番「もう離さない」とチャンピオンベルトを強く抱きしめた。また、エルナンデスの計量失敗がニュースになったことで、「今日は村田(諒太/帝拳)さんが一番注目されていたけど、このニュースで注目が集まって、オレの応援も増えたかなって思って報道陣の皆さんに感謝しています」と“らしい”解釈を披露。

 11日の公開練習でも、シャドー1Rで「疲れた〜」、3分の縄跳びで「足つりそう……」と正直な心境を吐露。さらに、「エルナンデスの顔が怖いじゃないですか。慣れるために映像をたくさん見ています」と緊張感を感じさせないコメントを連発していた。

 KO率100%の強打と、お茶目な沖縄の好青年。恩師である具志堅会長同様に、このギャップがさらにファンをひきつけるに違いない。ボクシングファンならず、スポーツファンはさらなるスターに駆け上がるであろう「比嘉大吾」を覚えておいたほうがいい。

(取材・文:竹内英之/スポーツナビ)

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