新常識!?「速く」なる傾向のクレーコート 杉山愛コラム「愛’s EYE」

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スピン量の多い選手が優位

「球足が遅い」が常識だったクレーコートに変化が。絶好調のナダルにとっては……どんなコートでも問題ナシ!? 【写真:ロイター/アフロ】

 クレーコートのシーズンですね。今回はクレーコートにおけるテニスの傾向が少し変わってきている、というお話をしてみたいと思います。

 表面が土のクレーコートはボールがよく跳ねるので、スピン(回転)量の多い選手に向いています。私自身、そのような選手は対戦していて嫌でしたね。全仏のタイトルも持っていて、今シーズン好調のスベトラーナ・クズネツォワ(ロシア)やフランチェスカ・スキアボーネ(イタリア)がそうです。サマンサ・ストーサー(オーストラリア)も、クレーでは当たりたくない選手でした。

 ボールが跳ねるとタイミングがとりにくく、跳ねてくるボールをまともに受けていると、ボディーブローのように効いてパワーが奪われてしまいます。また、そのボールに対応しているだけでは自分の攻撃につなげられないので、前で処理しなくてはなりません。すると、より細かいフットワークや、ピンポイントのタイミングで捉える技術が求められ、より神経を使います。したがって、どんどん体力が奪われていきます。

 ですから、クレーコートはスピン量の多いボールを打つ選手、しかも質の高いスピンを打つ選手が有利なのです。男子でいうとラファエル・ナダル(スペイン)がまさにそういった選手で、あれだけのタイトルを取っていることがその裏付けです。

時代に合わせた変化 球足が速くなる傾向に

「土のきめの細かさ」が球足の早さに影響する 【写真:ロイター/アフロ】

 前にハードコートでも球足が速め、遅めという違いがあるという話をしましたが、クレーコートもかなり幅があります。どんな質の土が使われているか、土のきめの細かさが球足の速さに影響するのです。
 以前は、重い土を使っているため球足が遅く(バウンド後のボールのスピードが比較的遅くなること)、なかなか1ポイントが決まらないコートもありました。その中で、マドリードとローマは速め、また、全仏のローランギャロスは遅すぎず速すぎず、しかもどこのクレーコートよりも整備が行き届き、イレギュラーバウンドもほとんどなくてプレーしやすいという印象がありました。

 ところが今では、クレーコート全般に球足が速くなっているように思います。
 クレーは球足が遅い分、ディフェンス力が上がり、ハードコートよりラリーが長くなり、試合も長くなる傾向があります。そうすると、見ている方も大変ですし、実際、相手のミス待ちが多くなって、ラリーの質が下がってしまう部分もなきにしもあらずだったと思います。そこで、より攻撃的なプレーを促すために、球足の速さが求められるようになってきたものと考えられます。

新時代のクレーテニス

右手首に不安を抱える錦織。全仏オープンを前に、欧州でのクレー大会に挑んでいる 【写真:ロイター/アフロ】

 クレーのテニスはもともと、ハードコートより多くのものを求められます。なかなかウィナーが決まらないため、コートをより広く使うこと、あるいは「三次元」を使ったプレーが求められます。また、左右だけでなく前後の動きも重要です。忍耐力やフットワークも大切で、そのフットワークの中身も、スライドの技術など他のサーフェス(コート)と異なるテクニックが要求されます。
 “より多く”を求められるのがクレーのテニスであり、その奥深さこそクレーの醍醐味(だいごみ)と言えます。その特徴を大きく変えずに、よりスリリングなテニスを指向しての調整と見ていいでしょう。

 以前はクレーコート・スペシャリストがクレーの全仏オープンを制することが多かったのですが、球足が速くなったことで、近年はより多くのことが求められるようになりました。女子でも、最近の選手はより攻撃的になっているので、スピン系よりフラット系の選手が活躍する例も目立っています。昨年、セリーナ・ウィリアムズ(米国)を破って優勝したガルビネ・ムグルサ(スペイン)もフラット系の攻撃的な選手です。

 クレーでも、より攻撃的なテニスが求められているというのが、今の全般的な傾向なのです。
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