田中刑事「五輪に出れば人生が変わる」 スケーターとして見据える“その先”

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飛躍のシーズンを過ごした田中刑事が、五輪への思いやキャリアについて語ってくれた 【スポーツナビ】

 田中刑事にとって、2016−17シーズンは実り多き1年となった。昨年11月のNHK杯で3位、年末の全日本選手権では2位に入り、世界選手権の切符を初めて勝ち取った。しかし、2月の四大陸選手権で13位、続く世界選手権も19位と後半戦は思うような結果を残せず。シーズン通して安定した力を発揮する難しさを知った。「良い面も悪い面もたくさん経験できた」と田中は振り返る。

 来年2月には平昌五輪が行われる。今季の成績から田中も代表の有力候補となるだろう。五輪シーズンに向けて、田中は何を思うのか。自身のキャリア、羽生結弦ら同級生への思いも含めて話を聞いた。

世界選手権で感じたトップとの差

――16−17シーズンは飛躍の1年になりました。

 本当に自分としても頑張らないといけないシーズンでしたし、五輪まで今季を含めて2シーズンしかなかったので、逆算して「この試合には出ておきたい」「成績を残したい」と考えていました。なんとか目標としていた試合には出場できたと思います。

――今季の良かった点と、悪かった点を教えてください。

 良かった点はNHK杯、全日本選手権、ユニバーシアード(2位)とそれなりに納得のいく演技ができたことですね。ただその良い演技をシーズンの前半と、後半の四大陸と世界選手権で出せなかったのが悔しかったです。

――四大陸と世界選手権で良い演技をできなかった原因は?

 四大陸に関してはユニバーシアードからの連戦だったので、少し思い描いていたコンディションとは違っていました。気持ちは上がっていたんですけど、調子が追いつかなかったので、自分の中でも大変な時期でしたね。でも、こういう連戦を経験できて良かったと思います。世界選手権については、ショートプログラム(SP)で失敗したのは緊張感が原因でした。本番までは良い雰囲気で臨めたんですけど、いざ曲が始まってみると思った以上に緊張してしまい……。それでもフリースケーティング(FS)ではジャンプの失敗がありながら、それ以外の部分は落ち着いてできたと思うので、良い面も悪い面もたくさん経験できたなと思います。

世界選手権では19位に終わるなど、トップ選手との差をあらためて感じた 【坂本清】

――グランプリシリーズや世界選手権を戦う中で、世界との差を一番感じた部分はどこでしょうか?

 選手それぞれの色というのを感じましたね。ジャンプの戦いになりつつありますけど、その選手の特長がしっかり見られたし、何かを訴えかけるような演技をたくさん見ることができたので、そういう部分を自分でも出していけたらと思います。

――どの選手の演技が一番印象に残りましたか?

 ジェイソン・ブラウン選手(米国)や、僕が見ていて「こんな選手になれたらいいな」と思ったのが、ミーシャ・ジー選手(ウズベキスタン)ですね。引退するという情報を聞いていたので、最後の演技だと思って見ていました。全部出し切って終わったというのもあるし、表現面で見ると、あんなに演技で何かを訴えかける選手になれたらいいなとすごく感じました。

『椿姫』を超える演技を目指す

――4回転を武器にする選手よりも、ジェイソン・ブラウン選手やミーシャ・ジー選手のような表現で訴えかける選手の方が、田中選手の理想には近いのですか?

 もちろん両方で戦いたいとは思っています。ジャンプで争うスポーツ的な戦いにも加わっていきたいですし、表現面についても、せっかくフィギュアスケートに芸術的な要素があるので、それを魅せていきたいです。

――表現面については、どういうこだわりを持っていますか?

 そんなにこだわりはないです。僕は初めて聴いた曲を「これでいこうか」という感じで進めていくんですね。曲の最初の印象が「すごく良い」というのはないんですけど、振り付けを始めて、プログラムが完成に近づくにつれて「これは面白いな」と思うことがよくあります。少しずつプログラムの完成度が上がっていく過程を楽しんでいるんだと思います。

――ご自身で曲を選んだことはないのですか?

 ないですね。エキシビションの曲は自分で選ぶこともあるんですけど、競技で滑る曲は1年間通してやらないといけないし、僕は2シーズン続けて滑ることが多いので、飽きない曲選びも難しいんですね。最初から好きな曲でいくと、シーズン半ばくらいで飽きちゃうかなと思って(笑)。いただいた曲が難しければ難しいほど、考える時間も多くなりますし、振り付けをしていく上で楽しいなと思える部分もたくさん出てくる。伸びしろがある曲を滑りたいので、そこは自分で選ぶよりも振り付けの先生に選んでもらったほうがいいのかなと思っています。

お気に入りのプログラムとして挙げたのが『椿姫』。これを超える演技を目指していると語る 【写真:ロイター/アフロ】

――最初はそうでもなかったけど、最終的にすごく好きになったプログラムはありますか?

 今の体制になって、マッシモ・スカリ先生に最初に振り付けてもらったのが『椿姫』(14−15、15−16シーズンのFS)でした。「こんな感じの曲なんだ」と思いながら作り始めたんですけど、2シーズン続けて使うと評価も変わってきたし、すごく良い味が出てきたなと感じることができたんですね。良い評価をたくさんもらえるようになったのも『椿姫』だったので、最近はあれを超える演技を目指しています。

――SPの『ブエノスアイレスの春』は2シーズン続けて滑りました。FSは今季からでしたが、来季はどうされるのでしょうか?

 来季も続けて滑る予定です。SPは6月に振り付けをする予定で、曲も決まっていないので、先生にお任せしています。何が来ても「はい」と言います(笑)。

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