田中刑事「五輪に出れば人生が変わる」 スケーターとして見据える“その先”

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同年代の選手とは引退の話も

将来はコーチを目指すという。同世代の選手とは引退について話すこともあるそうだ 【写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ】

――この4月から大学院に進学されました。セカンドキャリアという意味ではこの先に生きてきそうですね。

 今の段階ではコーチをやりたいと思っていて、大学を卒業して変わったことは特にないんですけど、いろいろな分野のことを勉強していけるので、コーチになったときの知識としては持っておきたいと思いますね。

――コーチになるのはあと何年後くらいとか考えていますか?

 全く考えていないです。いつ引退するかというのも考えていないですし、自分がやり切った、燃え尽きたと思えるくらいまでやりたいので、まだ決めていません。

――引退については同年代の選手たちとも話をするのですか?

 けっこう話をしますね。僕の世代で言うと(羽生)結弦や日野(龍樹)くんがいて、引退の話になると「いつしようか」みたいな感じになります。具体的な時期は決めていないですけど、引退したら「どこか旅行や遊びに行きたいね」という話なんかはしますね(笑)。

「結弦は今もあの頃のまま」

ノービス時代から同級生の羽生(左)や日野(右)とは切磋琢磨してきた。昨年11月のNHK杯は3人同時の出場がついに実現 【写真:アフロスポーツ】

――2人は田中選手にとってどういう存在ですか?

 初めて会ったのは野辺山合宿で、知り合ってからずっと一緒にここまでやってきました。ノービスの頃から争うこともできて、お互いの状況を知ることで、例えば結弦が新しいトリプルのジャンプを跳んだという話を聞くと「やばいな」という気持ちになり、自分も頑張ろうと思える存在でした。自分の中で良い危機感を持って、ノービスやジュニアの頃を過ごすことができたので、向上心を持つことにもつながる存在です。

――初めて会ったとき印象は?

 日野くんはかなり大人しい性格でしたね。結弦は当時から今みたいな感じです(笑)。(野辺山合宿で)最初に話しかけられたのも結弦だったんですよ。並び順で結弦が前にいたので、自己紹介をされました。「羽生結弦です」と。今もあの頃のまんまです。全く変わっていないですね(笑)。

――2人の存在は田中選手の成長に欠かせなかったと思います。その過程で「自分ももっと頑張らないと」と思った出来事はありましたか?

 全日本ジュニアで結弦が優勝したときですね。差を感じることもできたし、結弦はそのあとすぐにシニアに上がって、シニアでもそれほど負けることなくどんどん突き進んでいきました。すごくなっていく姿を間近で感じていました。

――やはり悔しい気持ちもありましたか?

 もちろん悔しさは大きかったです。ただ、悔しいと思うだけではダメだし、小さいころから見ていたので、彼がすごいというのは素直に受け止めることはできていました。自分はすぐに成長できないとは感じていたので、「俺たちは少しずつこつこつ上っていこう」と日野くんとも話していました。昨年のNHK杯ではやっと同じ舞台に立てて良かったです。

まだスケート人生は長い

――来季は平昌五輪があります。

 自分のレベルが、五輪を目指す状態にまで達していないと世界選手権で感じました。もう1年もないんですけど、今年の過ごし方でどちらにも転がると思います。まずはやるべき課題をこなさないといけないですし、五輪を見据えてその先のものもしっかり作っていく必要があります。毎年そうですけど、今年もさらに大事なシーズンになってくると思うので、どれだけ自分を追い込んで成長できるか。1つ1つの課題をクリアして、五輪の代表に選んでもらえるように、成長していくことが大事だと思っています。

平昌五輪だけではなく、その先の未来も見据える。田中のスケート人生はまだ長く続く 【スポーツナビ】

――田中選手にとって、五輪はどういう舞台ですか?

 スポーツ選手にとっては夢の舞台ですし、そこで最高の演技をすることができれば、スケートが好きな方だけではなく、いろいろな方に見てもらえます。出れば人生が変わるのかなと。前回のソチ五輪では結弦もそうだし、町田(樹)くんや高橋(大輔)選手もみんな輝いて見えたので、五輪でしっかり自分の演技を出し切れたときの達成感はすごいんだなと思いますね。

――自身のキャリアにとって五輪出場というのはどういう位置付けになりますか?

 あの舞台で自分が思い描いた100パーセントの演技をできたら、今までの試合とは違う達成感があると思います。自分のスケート人生においては一番の目標にしたいですが、それだけではダメだと思うので、どの試合にも五輪と同じくらいの気持ちで挑んで、少しでも多く達成感を得る演技を残していきたいです。その最高の達成感が五輪にはあると思います。五輪はこれからの競技生活における1つの道しるべとなると思うし、僕はその先も見たいので、まだまだスケート人生は長いなと感じています。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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