宇野の後悔「2回転に逃げてしまった」 それでも光った状況に応じた判断力

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笑顔なき100点超え

国別対抗戦の男子SPで1位を奪った宇野。しかし演技後の表情に笑顔はなかった 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 演技を終えた瞬間、宇野昌磨(中京大)は真顔だった。キス&クライで103.53点という点数を聞いたときに、一瞬微笑んだが、すぐに浮かない表情に戻る。「最後まで攻め切ることができなかった」。宇野はそう悔やんだ。

 フィギュアスケートの今季最終戦となる国別対抗戦が20日、東京・国立代々木競技場第一体育館で開幕し、男子ショートプログラム(SP)では宇野が1位となり、12ポイントを獲得した。この結果、チーム別順位では日本がトップに立った。

 全選手の中で唯一となる100点超えを果たしながら、宇野が満足できなかったのは、自らの姿勢だった。冒頭の4回転フリップはなんとか着氷。続くジャンプは4回転トウループ+3回転トウループの予定だったが、2つめのジャンプが2回転になってしまった。

「『なってしまった』というより『してしまった』という感じです。この試合はチーム戦なので、ミスをしたら大きく点を落として、みんなに迷惑をかけてしまう。3回転トウループを付けられなくはない4回転トウループだったんですけど、2回転に逃げてしまいました」

 最後のトリプルアクセルは、GOE(技の出来栄え点)で満点となる3点が付く完璧なジャンプだった。自身3度目の100点超えは、上々のスコアと言える。しかし、宇野にとっては結果より「攻め切る」ことが重要だったのだ。

“逃げ”の姿勢を見せた自分を許せず

3回転を2回転に変更して「逃げてしまった」自分を許せなかった 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 シニアに上がった昨季から、宇野は「何があっても攻めていく」ことを目標に掲げ、試合に臨んできた。それは、2015年9月のUSインターナショナルクラシックでミスを連発し5位に終わったことで、そうした失敗が“逃げ”の姿勢に入ったときに起きるものだということを学んだからだ。それ以来、攻める演技ができたときは、例えジャンプで転倒しようと、宇野は満足げな表情を浮かべていた。

 今季は4回転フリップのみならず、4回転ループも習得。3月の世界選手権(フィンランド・ヘルシンキ)では銀メダルを獲得し、誰もが認めるトップスケーターになった。そこまで飛躍できたのも、あえて難しい挑戦をして、自らを高めてきたからに他ならない。だからこそ「逃げてしまった」自分を許せなかった。

「良い言い方をすれば、チームのためにという言い方になるかもしれません。ただ、朝の練習でも6分間練習でも4回転+3回転に少し自信がなくて……。(2本目を)2回転にして、最後のトリプルアクセルを跳べば、チームにも迷惑がかからない。そういう逃げる気持ちが出てきてしまって、演技以上に自分に負けたという感じがありました」

 個人戦だったら、こうした判断には至らなかったのかもしれない。しかし、チームのことを考えれば、あえてリスクを冒さず、点数を狙いに行くことも必要だ。そこに折り合いをつけるのは難しい。判断は間違っていないが、自分の気持ちとしては満足できない。だから葛藤が生じる。宇野の反省はさらに続いた。

「自分はまだまだ守りに入る選手ではないし、攻めたかったんですけど、攻められなかった。みんなに対しても、自分に対しても申し訳ないです」

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