リーグ傾向に反する三河、堅守徹底の琉球 アナリスト視点でBリーグを見よう(5)
本記事で扱うデータは、Bリーグが競技力向上のためにB1に導入したバスケットボール専用の分析ツール「Synergy」の数値を元にしている。Bリーグ初年度のクライマックスを、データとともに楽しんでいただきたい。
ポストプレーを主体とする三河
【(C)B.LEAGUE】
彼らの最も顕著な特徴、それはポストプレーを主体とするプレースタイルだ。帰化選手である桜木ジェイアールを擁し、日本人NO.1の平均得点を記録した金丸晃輔もポストでのディフェンスの扱いが卓越している。
ボールを運んできて、まずはインサイドで面を張る選手を見て……とバスケットを教えられた方も多いはずだ。しかし、今季のBリーグ全体のポストからのシュート期待値は0.844と攻撃全体の平均値(0.893)を下回る。平均値を超えるチームが三河、川崎ブレイブサンダース、琉球、アルバルク東京、新潟アルビレックスBBと5チームしかいないことを考えると、決定力0.947の三河がポストの平均を引き上げていることが浮かび上がる。
三河がチームとしてポストからシュートを放つ頻度は16.1%とリーグで2番目に多い。強みを徹底活用できている証拠は、ポストからのシュート回数だけではなく、この脅威を感じた相手がダブルチームを送ってきたときの冷静なパスアウトにある。今度はシューターたちが相手にその代償を払わせるのだ。実際ポストからパスアウトされた後のシュート回数1153回もリーグ最多となっており、その決定力もリーグの頂点に君臨する。ポストプレーとそこからの展開で攻撃の38.72%を占めており、たいがいの相手はこっぱみじんにされてしまうのだ。
今の日本にあって、彼らのペースにのまれることなく別の土俵に引きずり出すことができるチームはいくつあるだろうか。それを実現する鍵となるのは恐らく“リズム”だろう。
効率の良いオフェンスの指標として、キャッチ&シュート(C&S/キャッチしてすぐシュートするプレー)という項目がある。このC&Sの半分以上が三河はシュートチェックを受けた状態だ。並のチームならば決定力が激減するところだが、彼らは落ちるどころか効率がリーグで2番目という精度である。
得点効率が低いはずのミドルシュートも落とさない
帰化選手の桜木(右)らを軸にポストプレーを主体とした攻撃を仕掛ける傾向にある三河 【(C)B.LEAGUE】
このミドルレンジからの得点は、チーム総得点の18%とリーグで2番目に多い。得点マシン金丸はエリア(ペイント)内で180点を挙げ、2P得点の合計は464点、つまりミドルレンジから284点を挙げている。この284点分はBリーグ全選手中最大(他に200点を超えるのは川崎のニック・ファジーカスのみ)。
それでも2Pシュート成功率は46.1%と、どのエリアから打とうが現在のBリーグ内競争でみると良いシュートになっている。さらに三河には100点以上ミドルレンジから決めている選手が桜木、比江島慎、ギャビン・エドワーズと3人いる。いずれも3Pシュートや強みを消された後のオプションとして、平均的なプレーヤーが習得に悩むタイプのシュートで高い決定力となっている。
チーム全体ではリーグで3番目に少ないピック&ロールからのシュートも比江島はチーム最多201回シュートを放ち、決定力は100回以上放った選手の中で最高である。
これらの数字は、いかに三河の選手たちがリーグ内で突出した得点能力を有するかを示している。もはや彼らにとってはノーマークかどうかよりも、自分のリズムなのか、チームのリズムなのかの方が優先されると言っていい。「良いシュートを打とう!」とひとくくりにしても、三河のようなチームをみているとシュートセレクションの善し悪しは、チームのスタイルや文化、そして在籍選手のタイプによってチームごとに変わることをあらためて教えてくれる。