レアルとバルサが演じる喜劇と悲劇 CL4強は特徴の異なるチームの激突に

バルサに必要なのは原点回帰

現在のバルセロナは攻守のバランスが崩れつつある、ひびの入ったチームになっている 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 バルセロナ独自のプレー哲学、そしてそれを実践する中堅世代の選手たちの大半については疑う余地がない。必要なのはいくつかのポジションを補強するためのバックアッパーだ。ダニエウ・アウベスの移籍以降、本職の右SBは不在のままだ。中盤にはチームの中心を担えるレベルのMFがほとんどおらず、特に継続的に高いパフォーマンスを保てなくなっているベテランのアンドレス・イニエスタの代役が見つかっていない。バルセロナほどのビッグクラブには、違いを生み出せる突出したレベルのGKも必要だ。

 ルイス・エンリケの退任が決まった今、バルセロナはチームやフロントの改革に臆せず臨める監督を探さなければならない。バックアッパーのレベルが低く、試合で使える選手が13人ほどしかいないチームが自信を取り戻せるような即戦力も補強する必要がある。

 攻守一体のフットボールを実現していた過去の時代とは異なり、現在のバルセロナは攻守のバランスが崩れつつある、ひびの入ったチームになっている。ルイス・エンリケが然るべきレベルになかったことは明らかだ。後任監督はフランク・ライカールトやジョセップ・グアルディオラの時代(03〜12年まで)に見いだした原点へと回帰しなければならない。

 先述の“エル・クラシコ(伝統の一戦)”では、演劇の喜劇と悲劇のごとく対照的な状態にある2チームが、リーガのタイトルを懸けて対戦した。現在、首位を走っており、CLでも準決勝に勝ち上がったホームのレアル・マドリーに対し、バルセロナはライバルを勝ち点3差で追う立場で、ヨーロッパの舞台からは姿を消したばかりだった。試合は後半アディショナルタイムのメッシのゴールで3−2と劇的勝利を挙げたバルセロナが首位に浮上したものの、レアル・マドリーは1試合未消化となっている。

伏兵モナコはリーグでも首位を走るダークホース

18歳の新星ムバッペら破壊力抜群の攻撃陣を擁する伏兵・モナコにも注目が集まる 【写真:ロイター/アフロ】

 マドリーにはもう1チーム、喜びに満ちたチームが存在する。昨季のプレミアリーグ王者であるレスターとの困難なアウェー戦(セカンドレグ)を1−1で凌(しの)ぎ切り、4シーズンで3度目のCL準決勝進出という偉業を成し遂げた、ディエゴ・シメオネ率いるアトレティコ・マドリーである(2戦合計2−1)。

 昨季の決勝でPK戦の末に宿敵レアル・マドリーに敗れた際、アトレティコ・マドリーが翌シーズンに立ち直ることは極めて困難だと誰もが考えていた。だが、これまで何度も強靭な精神力で障害を乗り越えてきたこのチームは、システムを成熟させ、選手個々の能力を引き出しながら、ファイナルまであと2試合のところまでたどり着いた。

 熾(し)烈を極めたレスターとの準々決勝では、ビセンテ・カルデロン(ホームスタジアム)でのファーストレグを疑惑のPK(あれはペナルティーエリア外で生じたファウルだった)による1ゴールで制した。敵地でのセカンドレグは、前半26分にサウール・ニゲスのゴールで先制し、その後はホームチームの猛攻を耐え凌いだ。ホーム&アウェーの戦い方を熟知し、リーガ・エスパニョーラでも3位の座を固めつつあるアトレティコ・マドリーは、準決勝での対戦が決まったレアル・マドリーにとって困難なライバルとなるだろう。

 レアル・マドリー、アトレティコ・マドリー、ユベントスとともに4強入りを果たしたのは伏兵モナコだ。ハイテンポのプレーリズムを武器にリーグ・アンでも首位を走るダークホースは、18歳の新星キリアン・ムバッペや相次ぐけがを乗り越えて完全復活を果たしたラダメル・ファルカオら、破壊力抜群の攻撃陣を擁している。

 全く異なる特徴を持つ4チームが勝ち残った今季のCL。ラテン一色となった準決勝では、カーディフのウェールズ国立競技場で行われる決勝を目指して、魅力的な戦いが繰り広げられるはずだ。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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