モナコが充実した内容でCL4強進出 18歳の仏代表FWムバッペが躍動

中野吉之伴

バス襲撃事件後、翌日に再試合が行われることに

2戦合計6−3でモナコがCL準決勝進出を決めた 【写真:ロイター/アフロ】

 チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝ドルトムントvs.モナコは、4月19日(現地時間)にセカンドレグが行われ、モナコが3−1で勝利。2戦合計6−3とし、準決勝進出を果たした。

 ファーストレグの試合開始直前の11日に起きたドルトムントのチームバス襲撃事件の影響で、世間の注目と関心はドルトムントに集まっていた。そしてあれだけの事件だったにもかかわらず、「ほかに日程が空いていないから」という理由だけで、あっさりと翌日に再試合を組んでしまった軽率さをUEFA(欧州サッカー連盟)は非常に重く受け止めなければならない。

ファーストレグ終了後、今回の事件で負傷したマルク・バルトラにメッセージを送る選手たち 【写真:ロイター/アフロ】

 リバプールのユルゲン・クロップ監督は古巣・ドルトムントを襲ったあまりの困難に心を痛め、「今回の決断を下した人間が、もしあの時同じバスに座っていたなら、ほぼ間違いなく試合は行われなかったことだろう。あの場にいなかった人間が、何があったかを正しく想像することなどできやしない。過密日程の中で延期スケジュールを見つけるのが難しいのは分かる。だがあの時、もし『試合は行わない。来週、解決策を見いだそう』と言っていたら、誰もが理解を示しただろう」と言及。

 ホッフェンハイムのユリアン・ナーゲルスマン監督は「スポーツ界から経済的なしがらみが少しでも減って、もっと人間的なものがフォーカスされるようになったら、きっとその方がみんなにとって良いことなんだ」とドルトムントの人々を思いやった。

 ドイツの政治家が、テロに屈せず試合に臨む彼らの姿勢を褒めたというが、そのために彼らはサッカーをしているのではない。ファーストレグ後にドルトムントのギリシャ代表ソクラティス・パパスタトプーロスが涙を流しながら訴えた「僕らは人間なんだ」という言葉をみんなが真摯(しんし)に受け止めなければならないだろう。

2試合通して攻守に高いクオリティーを見せる

モナコは2試合通して、攻守ともに高いクオリティーを見せた 【写真:ロイター/アフロ】

 そうした普段通りでは全くない状況下で行われた2試合は、対戦したモナコにとっても非常に難しい試合だったに違いない。だが、彼らはフェアだった。ピッチ上では全力で戦い、ファンはそんなチームを支えようと精いっぱいの声援を送った。

 18歳のフランス代表FWキリアン・ムバッペばかりがクローズアップされるモナコだが、準々決勝の2試合を通して攻守ともに高いクオリティーを備えたゲーム運びを見せた。攻撃ではサイドを中心に縦に素早く展開し、一気にゴール前までボールを運ぶ。ドルトムントはセンタリングに対する守備に問題を抱えているだけに、モナコは何度もクロスからチャンスを作り出した。

 セカンドレグでドルトムントは2トップのムバッペ、ラダメル・ファルカオに対して、ソクラティス、ルカシュ・ピシュチェク、マティアス・ギンターの3枚のセンターバック(CB)を置くことで数的有利を保とうとしていたが、選手間の距離があいまいで、たびたび1対1の状況を作られてしまう。不安定だったドルトムントは27分に早くもエリック・ドゥルムを下げて、オスマン・デンベレを投入し、4バックに変更。この交代で多少は全体のバランスが改善されたが、サイド攻撃に対しては最後まで問題を抱えていた。

 トマ・レマルとバンジャマン・メンディのハイスピードコンビで左サイドを押し込み、縦横無尽にピッチを動き回るベルナルド・シウバがタメと変化を作る。ドルトムントはそんなモナコの攻撃に振り回されており、サイドで起点を作られると、FWまでのセンタリングコースが常に空いている状態。特にペナルティーエリア内での動き出しに秀でたファルカオは、さっと相手DFの前に走り込んでパスを引き出せるので、1本のクロスが直接チャンスにつながる。セカンドレグにファルカオが奪った2点目のシーンは、まさに象徴的なゴールだった。

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著者プロフィール

1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで経験を積みながら、2009年7月にドイツサッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU15チームで研修を積み、016/17シーズンからドイツU15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

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