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違いを作り出したディバラのクオリティー
ユーべが狙い通りの展開でバルサに先勝

ディバラが22分間で2ゴール

CL準々決勝第1戦、ユベントスはディバラ(左から2番目)の2ゴールなどでバルセロナに先勝した
CL準々決勝第1戦、ユベントスはディバラ(左から2番目)の2ゴールなどでバルセロナに先勝した【Getty Images】

 両チームのパフォーマンスには、3−0というスコアほどの差があったようには見えなかった。チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝というこのレベルまで来ると、拮抗(きっこう)した試合の中で違いを作り出すのは、何よりもまず個のクオリティーである。


 ユベントスは、最もそれを期待されていたパウロ・ディバラが、最初の22分間に巡ってきた2つのシュートチャンスを2つのゴールに結びつけるという決定的な働きを見せて、試合の流れを手元に引き寄せた。一方のバルセロナは、同じ立場にあるリオネル・メッシが、素晴らしいラストパスによって前後半に一度ずつ決定機を作り出したものの、最後のフィニッシュに絡むことができずに終わった。


 試合の結果を1人の選手のパフォーマンスに結びつけて語るのはフェアではないかもしれない。しかし、圧倒的な個の力によって「試合を決める」働きを期待され、また要求されていたディバラとメッシの貢献度の差が、ある意味でこの試合を象徴していたと言うことはできると思う。

ユベントスのハイプレスに苦しむバルセロナ

 ユベントスのマッシミリアーノ・アッレグリ監督がピッチに送り出した「4−2−3−1」は、この年明けから本格導入された布陣。ゴンサロ・イグアイン、ディバラ、マリオ・マンジュキッチ、フアン・クアドラードという4人のアタッカーに加えて、高い攻撃力を備えるミラレム・ピヤニッチを中盤でゲームメーカーとして起用する、かなり前掛かりの構成が特徴である。


 ユベントスは、立ち上がりから積極的に前に出てバルセロナの後方からのビルドアップにハイプレスを仕掛け、ポゼッションを分断してハイペースな展開に持ち込もうというアプローチを見せた。


 この試合におけるバルセロナの泣きどころは、中盤で攻守のバランスを取り、ポゼッションの核となるセルヒオ・ブスケツが累積警告で出場できないこと。ルイス・エンリケ監督は、テクニカルなパサータイプのアンドレ・ゴメスではなく、守備力のあるハビエル・マスチェラーノをブスケツの代役としてセンターバック(CB)から中盤の底に上げ、最終ラインにはジェレミ・マテューを起用した。


 しかし、CBとしてはビルドアップ能力の高いマスチェラーノを欠いた最終ラインは、ユベントスのアグレッシブなプレスの前にパス回しでばたつく場面が目立ち、後方からスムーズに攻撃を組み立てることができない。


 開始から2分足らず、マテューが後方からの球出しに詰まって自陣深くでスローインを与えた。そこからの展開をファウルで止めざるを得なくなるという流れで、右サイドの好位置でFKを与えてしまう。ピヤニッチが蹴ったそのFKをゴール前中央で捉えたイグアインのヘディングシュートは、GKマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンの正面に飛んで難なくセーブされたが、ビルドアップに苦心するバルセロナ、アグレッシブに前に出るユベントスという、試合前半の展開を象徴するような場面であった。


 ユベントスが先制したのはその5分後。めずらしく自陣からスムーズなビルドアップで左サイド深くにボールを運んだ後、イグアインの大きなサイドチェンジを受けて右サイドからゴールに向かって1対1の突破を仕掛けたクアドラードが、ニアサイドの狭いスペースに入ってきたディバラに短いパス。ディバラは敵4人に囲まれた1.5メートル四方ほどのスペースの中でトラップから反転するとそのまま左足を振り抜き、ファーポストぎりぎりに美しい弾道のシュートを流し込んだ。スペース、時間、コースのいずれをとってもほんのわずかしかない、きわめて難易度の高いシュートチャンス。これを難なく決めたディバラをたたえるしかないというゴールである。

ボールに絡む機会が少なかったメッシ

前半は右サイドに開くことが多かったメッシ(左)。ボールに絡む機会が少なかった
前半は右サイドに開くことが多かったメッシ(左)。ボールに絡む機会が少なかった【Getty Images】

 狙い通り先制したユベントスは、ハイプレスの圧力をやや緩めつつ、下がり過ぎない位置に「4−4−2」の守備ブロックを構築してボールにプレッシャーをかけ続けることで、やや受動的に試合をコントロールする体制に移行する。


 本来のバルセロナならば、相手が受けに回れば圧倒的なポゼッションで中盤を制圧して相手を敵陣に押し込んでいくところなのだろうが、この日は後方からのビルドアップだけでなく中盤でのポゼッションでももたつきが目立った。


 常にボールに近いところに顔を出し、シンプルなさばきで攻撃にリズムを作るブスケツがいない上、普段ならば中央のゾーンでポゼッションに絡み、数的優位を作り出す役割を果たすメッシも、右サイドに大きく開いた位置を取っていた。そのため、ボールはつながるものの、ユベントスの守備ラインを越えて局面を前に進める質の高いパスが通らないのだ。


 ルイス・エンリケが、ここ1カ月あまり使ってきた、メッシをトップ下に置いた中盤ひし形の「クライフ型3−4−3(3−3−1−3)」をあえて封印し、4バックの「4−3−3」でこの試合に臨んだ意図がどこにあったのかは分からない。少なくともユベントスにとっては、メッシが右サイドでボールに絡まないまま孤立して多くの時間を費やしてくれたことは幸いだった。実際、バルセロナが作り出したチャンスの多くは、中央に進出してボールに絡んだメッシが作り出したものだったからだ。


 その典型が21分のアシスト。ユベントスが8人で構築した守備ブロックの手前でボールを持つと、左サイド大外から、ボールに気を取られたダニエウ・アウベスの隙をついて裏に走り込んだアンドレス・イニエスタに、針の穴を通すようなスルーパスを送り込んだ。この絶対的な決定機は、右足でファーポスト際を狙ったイニエスタのシュートを、GKジャンルイジ・ブッフォンが鋭い飛び出しと素早い反応でビッグセーブ。これが決まっていたら試合の流れはまったく変わっていたに違いないだけに、まさしく値千金の偉大なセーブだった。


 絶対的な決定機をしくじった直後に失点をくらうというのはよくあること。ユベントスの2点目もまさにそのパターンだった。自陣からのビルドアップで左サイド深くにボールを運んだところまでは、1点目とまったく同じ。違ったのは、サイド深くからの折り返しをディバラがそのままゴールにねじ込んでしまったところだ。これも1点目同様、非常に難易度の高いシュートチャンス。開始から20分あまりで2度巡ってきた難しいチャンスを2度とも決めたディバラは、間違いなくこの試合のMVPだろう。

片野道郎

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。2017年末の『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』(河出書房新社)に続き、この6月に新刊『モダンサッカーの教科書』(レナート・バルディとの共著/ソル・メディア)が発売。

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