違いを作り出したディバラのクオリティー ユーべが狙い通りの展開でバルサに先勝

片野道郎

後半にバルサが修正するもゴールは奪えず

後半にメッシの突破からチャンスを迎えるも、スアレス(中央)のシュートはわずかに外れた 【Getty Images】

 2点のビハインドを背負ってハーフタイムを迎えたルイス・エンリケ監督は、まったくさえなかったDFマテューを下げてMFアンドレ・ゴメスを中盤の底に入れ、マスチェラーノを最終ラインに下げるという修正を施す。結果論を承知で言えば、スタートの人選は間違いだったということになる。

 ルイス・エンリケは同時に、攻撃の局面で右サイドバックのセルジ・ロベルトを積極的に高い位置まで進出させることで、メッシがより頻繁に中央のゾーンに入って行ける形を作ろうとした。後半開始直後には早速その形から、メッシが裏に走り込んだネイマールにスルーパスを送り、そのこぼれ球をシュートするという危険な場面を作り出す。その後68分にも、メッシは中央右寄りのゾーンで前を向くと、ドリブルでキエッリーニをかわして絶妙なスルーパスをルイス・スアレスに送り込んだ。しかしこの絶対的な決定機もスアレスが決めきれず、ゴールにはつながらない。

 そしてこの時スコアはすでに3−0になっていた。後半開始直後にバルセロナが押し込む時間帯を作ったものの、そこからユベントスが反撃。55分に得たCKをジョルジョ・キエッリーニが頭でねじ込んだのだ。ユベントスはその直前にも、イグアインが単独で裏に抜け出す絶対的な決定機を作り出している(シュートがGKの正面をついて得点にはならず)。

念には念を入れた守り倒しで逃げ切りに成功

ディバラは難しいチャンスを2度とも決めてみせ、「個のクオリティー」を示した 【写真:アフロ】

 3点をリードして残り20分を切ったとなれば、考えるべきはいかにこのスコアを維持して試合をコントロールし、ゲームセットまでこぎ着けるかである。これがホーム&アウェーの第1レグであり、1週間後には敵地カンプノウでの決戦が控えているのだからなおさらだ。

 アッレグリ監督は、73分に運動量の落ちてきた右ウイングのクアドラードに替えて、フィジカルコンタクトに強く運動量のある守備的MFのマリオ・レミナを同じポジションに投入、81分にはこの日のヒーローであるトップ下のディバラを下げて、やはり守備的MFのトマス・リンコンを入れ、システムを「4−2−3−1(実質4−4−2)」から「4−3−3(実質4−5−1)」に変えて、チームの重心を下げる。さらに残り5分を切ったところで、MFピヤニッチを下げてCBのアンンドレア・バルザーリを投入。システムを「3−5−2(実質5−4−1)」に切り替えるという念には念を入れた守り倒しで逃げ切りに成功した。

 試合が終わってみれば、ボール支配率はユベントス35%対バルセロナ65%。立ち上がりから攻勢に出て先制し、引きすぎることなく試合をコントロールしながら追加点を重ね、最後は落ち着いて逃げ切るという、ユベントスにとってはまさしく狙い通りの展開だった。

 とはいえ、作り出した決定機を比べてみると、GKと1対1になる絶対的なチャンスは、ユベントスが1回(54分のイグアイン)だけだったのに対し、バルセロナは3回(21分のイニエスタ、68分のスアレス、69分のネイマール)。

 ディバラの決めた2ゴールは、決定機と呼ぶにはあまりに難易度の高い、単なるシュートチャンスだった。冒頭で、試合結果を左右したのが「個のクオリティー」だった、と書いたのも、まさにそれゆえである。

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著者プロフィール

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。2017年末の『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』(河出書房新社)に続き、この6月に新刊『モダンサッカーの教科書』(レナート・バルディとの共著/ソル・メディア)が発売。

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