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7試合で5ゴール、実績を残した久保裕也
ゲントをプレーオフに導いて評価を確立

久保を継続的にスカウティングしていたゲント

冬の移籍市場でゲントへ移籍し、活躍を続ける久保裕也
冬の移籍市場でゲントへ移籍し、活躍を続ける久保裕也【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 久保裕也のゲント移籍会見は現地時間1月26日に行われた。冬の移籍市場締め切り寸前の駆け込み補強とも捉えかねないタイミングだ。リーグ戦で2分け3敗、ベルギーカップでも敗退という“魔の12月”から間もない時期だっただけに、確かにこの時期のゲントはかなり血眼になって選手の獲得を繰り返していた。しかし、ゲントの会長を務めるイバン・デ・ウィッテは、継続的なスカウティングを経た上で久保を獲得したことを明かした。


「久保についてはかなり前から注目しており、夏の移籍市場の時期にもコンタクトを取っていたが、(久保の所属していた)ヤング・ボーイズに負傷者がいたこともあって獲得は難しかった。われわれは(昨年8月のCL予備戦で)久保がシャフタール・ドネツクから2ゴールを決めたのを見た。その後、(ELのグループリーグで)われわれはシャフタールにコテンパンにやられた(2試合で10失点)ので、印象的だった。


 もちろん、久保の獲得はシャフタール戦だけが決め手となったわけではない。彼の持つ選手としての価値、そして人間的な魅力からだ。われわれはスカウティングを続けることによって、そのことに自信を深めることになった。ゲントはチームとして難しい時期に入っていたが、いろいろなことを乗り越えて今、久保を獲得することができて大いに喜んでいる」

 

 デ・ウィッテ会長によれば、ハイン・ファンハーゼブルック監督本人から、久保に対してしっかりとゲントのガイダンスを行ったという。


「今回の補強は、明らかにファンハーゼブルック監督が欲しかったということ。そしてクラブのフロントが一丸となって意思疎通を図った結果」


 久保の代理人は、「ゲントの人たちはみんな僕より詳しく裕也を分析していて、社長、会長、スカウトたちは裕也のプレースタイルを(ゲントに)どうはめていくのか(意識を)統一していた」と舌を巻く。

想定外だったデビュー戦、直接FKで初ゴール

 そのころの久保は右膝の負傷から回復していたものの、コンディションは万全でなく、本来ならまだ先発出場はできない状況だった。しかし、欠場者が多くいるチーム事情もあって、ファンハーゼブルック監督は1月29日のクラブ・ブルージュ戦で久保をトップ下として先発に抜てきする決断を下す。久保はしっかりその期待に応え、ペナルティーエリアすぐ外、中央から左側のところから直接FKを右足で決めて、チームの2−0の勝利に貢献した。


「ハーフタイムに、誰がCKを蹴るか、誰がFKを蹴るかを話し合った。(本来のキッカーであるロブ・)スホーフスが出場できないため、試合前日の練習で(ルイ・)フェルストラーテに決まったが、彼は前半で退いた。それで、ハーフタイムにキッカーを探すことになったんだ。(モーゼス・)サイモン、(サミュエル・)カルー……。


 すると選手たちから『ユーヤ! ユーヤ!』という声が上がった。『なら、自分から蹴る』と彼は言った。自分から言い出さないところが、典型的な日本人なのかもしれない。そしてゴールを決めた。信じられない。彼にとって、最初の試合だったんだ。本来なら裕也は先発できるようなコンディションではなかった。しかし、(ダニエル・)ミリセビッチの風邪、(ブレヒト・)デヤーヘレの負傷もあって、私は裕也を先発させた」(ファンハーゼブルック監督)

ゴールを量産して“寿司ボンバー”と呼ばれる

ゴールを決め続け、ベルギーでは“寿司ボンバー”と呼ばれるようになった
ゴールを決め続け、ベルギーでは“寿司ボンバー”と呼ばれるようになった【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 デビュー戦からベルギーのメディアは久保のことを“寿司ボンバー”と呼び始めていたが、続く第25節の対ズルテ・ワレヘム戦(1−1)で久保が自ら奪ったPKを決めたことから、とうとう「“寿司ボンバー”が再びゴールを決める」(全国紙『ヘット・ニーウスブラット』)と新聞の見出しになってしまった。久保が77分に交代するシーンを同紙はこう描写した。


「ゲントの応援席に日の丸があった。『ユーヤ! ユーヤ!』。サポーターは新たなお気に入りの選手に対して歌い続けた。前節同様、ピッチを去る際、彼は日本式のお辞儀をした。日本語で『マイ・プレジャー(どういたしまして)』はどう言うのだろう? ベルギーに来て10日。ピッチに立って163分(編注:実際は150分)。“寿司ボンバー”がゲントのファンのハートを盗むまで、それ以上の時間は必要なかった」


 ベルギーリーグデビュー2試合で2ゴールというセンセーショナルなデビューを飾った久保だが、まだチームメートも久保もお互いの特徴を把握し切れておらず、連係面で課題が残っていた。


「点を取れていることは良いですが、プレーの中でまだあまりチーム内でフィットしている感じがない。そこをもっと突き詰めていかないといけないと思います」(ズルテ・ワレヘム戦後の久保)


 その後、オイペン戦(0−1)、スタンダール・リエージュ戦(1−1)とノーゴールだったものの、その後行われたレギュラーシーズン最後の3試合で久保は3ゴールを決めてチームの3連勝に大貢献した。久保の決めるゴールバリエーションの豊かさは目を見張る。第28節のムスクルン戦(3−1)では味方にパスを出した後、バイタルエリアまで走り込んだ久保は、リターンパスを右足のトラップでマーカーを外し、左足シュートを決めた。第29節のワースラント・べフェレン戦(3−2)は、ペナルティーエリアすぐ外でパスを受けてから反転し、左足シュートをゴール右隅に決めた。第30節のメヘレン戦(3−0)はハーフウェーラインを越したところからドリブルを開始し、最後はエラシコとダブルタッチのコンビネーションでDF3人を一気に抜き去り、右足でシュートを決めている。

中田徹
中田徹
1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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