7試合で5ゴール、実績を残した久保裕也 ゲントをプレーオフに導いて評価を確立
久保を継続的にスカウティングしていたゲント
冬の移籍市場でゲントへ移籍し、活躍を続ける久保裕也 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
「久保についてはかなり前から注目しており、夏の移籍市場の時期にもコンタクトを取っていたが、(久保の所属していた)ヤング・ボーイズに負傷者がいたこともあって獲得は難しかった。われわれは(昨年8月のCL予備戦で)久保がシャフタール・ドネツクから2ゴールを決めたのを見た。その後、(ELのグループリーグで)われわれはシャフタールにコテンパンにやられた(2試合で10失点)ので、印象的だった。
もちろん、久保の獲得はシャフタール戦だけが決め手となったわけではない。彼の持つ選手としての価値、そして人間的な魅力からだ。われわれはスカウティングを続けることによって、そのことに自信を深めることになった。ゲントはチームとして難しい時期に入っていたが、いろいろなことを乗り越えて今、久保を獲得することができて大いに喜んでいる」
デ・ウィッテ会長によれば、ハイン・ファンハーゼブルック監督本人から、久保に対してしっかりとゲントのガイダンスを行ったという。
「今回の補強は、明らかにファンハーゼブルック監督が欲しかったということ。そしてクラブのフロントが一丸となって意思疎通を図った結果」
久保の代理人は、「ゲントの人たちはみんな僕より詳しく裕也を分析していて、社長、会長、スカウトたちは裕也のプレースタイルを(ゲントに)どうはめていくのか(意識を)統一していた」と舌を巻く。
想定外だったデビュー戦、直接FKで初ゴール
「ハーフタイムに、誰がCKを蹴るか、誰がFKを蹴るかを話し合った。(本来のキッカーであるロブ・)スホーフスが出場できないため、試合前日の練習で(ルイ・)フェルストラーテに決まったが、彼は前半で退いた。それで、ハーフタイムにキッカーを探すことになったんだ。(モーゼス・)サイモン、(サミュエル・)カルー……。
すると選手たちから『ユーヤ! ユーヤ!』という声が上がった。『なら、自分から蹴る』と彼は言った。自分から言い出さないところが、典型的な日本人なのかもしれない。そしてゴールを決めた。信じられない。彼にとって、最初の試合だったんだ。本来なら裕也は先発できるようなコンディションではなかった。しかし、(ダニエル・)ミリセビッチの風邪、(ブレヒト・)デヤーヘレの負傷もあって、私は裕也を先発させた」(ファンハーゼブルック監督)
ゴールを量産して“寿司ボンバー”と呼ばれる
ゴールを決め続け、ベルギーでは“寿司ボンバー”と呼ばれるようになった 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
「ゲントの応援席に日の丸があった。『ユーヤ! ユーヤ!』。サポーターは新たなお気に入りの選手に対して歌い続けた。前節同様、ピッチを去る際、彼は日本式のお辞儀をした。日本語で『マイ・プレジャー(どういたしまして)』はどう言うのだろう? ベルギーに来て10日。ピッチに立って163分(編注:実際は150分)。“寿司ボンバー”がゲントのファンのハートを盗むまで、それ以上の時間は必要なかった」
ベルギーリーグデビュー2試合で2ゴールというセンセーショナルなデビューを飾った久保だが、まだチームメートも久保もお互いの特徴を把握し切れておらず、連係面で課題が残っていた。
「点を取れていることは良いですが、プレーの中でまだあまりチーム内でフィットしている感じがない。そこをもっと突き詰めていかないといけないと思います」(ズルテ・ワレヘム戦後の久保)
その後、オイペン戦(0−1)、スタンダール・リエージュ戦(1−1)とノーゴールだったものの、その後行われたレギュラーシーズン最後の3試合で久保は3ゴールを決めてチームの3連勝に大貢献した。久保の決めるゴールバリエーションの豊かさは目を見張る。第28節のムスクルン戦(3−1)では味方にパスを出した後、バイタルエリアまで走り込んだ久保は、リターンパスを右足のトラップでマーカーを外し、左足シュートを決めた。第29節のワースラント・べフェレン戦(3−2)は、ペナルティーエリアすぐ外でパスを受けてから反転し、左足シュートをゴール右隅に決めた。第30節のメヘレン戦(3−0)はハーフウェーラインを越したところからドリブルを開始し、最後はエラシコとダブルタッチのコンビネーションでDF3人を一気に抜き去り、右足でシュートを決めている。