7試合で5ゴール、実績を残した久保裕也 ゲントをプレーオフに導いて評価を確立

中田徹

久保の活躍でゲントは「最終節の勝者」に

久保の活躍もあり、メヘレンとの大一番を制したゲントは「最終節の勝者」となった 【Getty Images】

 プレーオフ制を採用するベルギーリーグは、レギュラーシーズンの第30節で各チームの明暗が大きく分かれたが、ベルギーメディアが「最終節の勝者」として大々的に取り上げたのはゲントだった。

 優勝やCL、ELの出場を争う「プレーオフ1」はレギュラーシーズンの上位6チームによって争われる。この「プレーオフ1」に参加できれば、毎試合、満員のスタジアムでトップマッチを10試合行うことができる。しかし7位以下になって「プレーオフ2」に回ってしまうと、消化試合の苦行を選手もサポーターも受けなければならない。

 第29節を終えた時点でゲントは7位、メヘレンは5位だったから、第30節のゲント対メヘレンは決勝戦とも呼べる大一番だった。その試合で久保はベルギーサッカーファンの目を引くゴラッソ(素晴らしいゴール)を決めたのだからすごかった。

 ファンハーゼブルック監督は試合後の会見で「多くの中心選手が抜けたが、新たに入った選手たち(久保、カルー、ロブレ・カリニッチ)が重要な役割を果たして違いを作ってくれた」と語った。久保本人は淡々と「ラスト3試合、勝てたのは良かったですけれども、最低限の仕事をしたかなという感じですね。チームの目標としては、『プレーオフ1』進出は絶対だったので、ここからかなという感じです」と語った。

監督「裕也のクオリティーはとても重要」

ゲントで示した力を、ワールドカップ予選でも発揮することができるか 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 メヘレン戦では連係面での向上も見られた。

「このチームは結構、プレーでも僕を生かしてくれます。パスも出てくるし、そういう意味でそんなにストレスもないですし、気持ちよくやらしてもらってます」(久保)

 ベルギー人記者が去ったインタビューエリアで、ファンハーゼブルック監督が久保について語ってくれた。

「今日の裕也は素晴らしかった。裕也はヤング・ボーイズでELに出たから、ゲントでは出場資格がない。(EL決勝トーナメント1回戦の)トッテナム戦のようなビッグゲームでプレーできないのは彼にとっても残念。しかし、裕也は真のトッププロフェッショナルだから、特別メニューのトレーニングもしっかりこなしてくれている。裕也のクオリティーは、ゲントにとってとても重要。われわれは裕也に満足している。彼はコンディショニング以外、改善ポイントはない。

 レギュラーシーズンから『プレーオフ1』まで3週間空くが、本当なら裕也にはエキストラにコンディショニングトレーングをさせたかったんだ。だけど、裕也は日本代表に選ばれるだろう。それは裕也にとっても日本代表にとっても大事なことだ。それでも理想を言えば、裕也にはベルギーに残ってコンディションをもっと上げてほしかった。彼にはけがをすることなく、ゲントに戻ってきてほしいね」

 膝の故障が癒えたとは言え、試合勘不足だった久保を、ファンハーゼブルック監督は徐々に出場時間を伸ばしながら、レギュラーシーズン最後の2試合でフル出場できるところまで持ってきた。それだけに、これからの3週間、手元に久保を置いて最後のチューンナップをしたかったというのが本音だった。

 だが、日本代表にとって今、久保は旬のゴールゲッターである。久保が代表選手として活躍し、選手としての箔(はく)を付けてゲントに戻ってきさえすれば、ファンハーゼブルック監督も満足するに違いない。ベルギーで重ねた7試合で5ゴールという実績。その力をワールドカップ予選で発揮してほしい。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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