山本隆弘が語るバレーの「駆け引き」 データで見るVファイナル展望<男子>

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 両チーム1勝1敗となり、史上初めてゴールデンセットが行われたファイナル3は、豊田合成トレフェルサがジェイテクトSTINGSを25−22で下した。勝ち上がった豊田合成は18、19日に東京体育館で行われるファイナルで、東レアローズと対戦する。

 ここまでの両チームの対戦成績を見ると、レギュラーシーズンとファイナル6、12月に行われた天皇杯・皇后杯全日本選手権を含めて5度対戦し、東レが3勝2敗とわずかに勝ち越している。互いに手の内を知り尽くした両チームは、国内最高峰の舞台でどんなプレーを見せるのだろうか。今回は2016−17シーズンのVリーグデータを用いながら、元全日本代表でパナソニック・パンサーズでも活躍した山本隆弘さんに見どころを語ってもらった。

 近年、バレーボールでは「アナリスト」と呼ばれるスタッフが膨大な情報を収集し、対戦相手の特徴や傾向を分析している。そんな状況下で、コート上ではどんな駆け引きが行われているのだろうか。

MBのサーブが攻撃的になったチームが上位に

ファイナル6の順位。レギュラーとファイナル6のブロックとサーブを分析した 【画像:スポーツナビ、ロゴ提供:Vリーグ】

 まず、ファイナル6までのデータを見ると、サーブ効果率の高いチームが上位になっています。サーブで攻めていかないと、ブレイク(自チームがサーブ時の得点)は取れませんからね。

※効果率:「(得点数−失点数)/打数」。得点だけではなく失点も加えて攻撃面での貢献度を総合的に評価する指標

 ファイナル6のデータで、東レはサーブ効果率が15.6%と最も高い。今季は富松(崇彰)や李(博)といったジャンプフローターでサーブを打つ選手が良くなりました。今はボールの質として、ジャンプサーブよりジャンプフローターの方が変化が大きい。そういう傾向が出ているので、ジャンプフローターを強化してきた東レが成功しているのかなと思います。チーム全員が攻めるサーブを持っていますから。

 豊田合成はイゴール(・オムルチェン)のサーブ力が抜けています。一番のポイントゲッターでもありますしね。さらには高松(卓矢)、それに加えて近(裕崇)と傳田(亮太)というミドルブロッカー(MB)のサーブが非常に効果的です。日本のバレー界全体で言っても、世界から見るとMBのサーブが少し弱かった。そういう部分でMBのサーブが攻撃的に変わりつつあるチームが上位に来ている印象です。

ブロックの駆け引きは短期決戦のポイント

【画像:スポーツナビ、写真提供:Vリーグ】

 勢いに乗っているし、チームがより完成しているのは東レで間違いないと思います。シーズンを戦いながらチームを固めていくのが東レです。ファイナル6のアタック失点をみると、1位の東レは16と非常に少ないですからね(豊田合成は31、最多はサントリー・サンバースの51)。ミスが少なくて手堅いバレーができている。

 ただ、数字としては、ブロックのセット平均が1.99(レギュラーシーズンとファイナル6の合計。ファイナル6進出チーム最下位)というのが意外ですね。レギュラーシーズンでリーグ1位を記録した富松が1人で止めているのかなという印象です。その富松も、ファイナル6だけの数字を見ると数値が下がっている(セット平均0.76→0.29)。

 富松はワンタッチを取るのがうまいし、相手がスパイクを打つ直前まで手を見せない。さらに移動が速いというのが特徴ですが、ファイナル6では富松を避け、彼がブロックにつきにくいような攻撃を仕掛けていました。または苦しいときは無理をせずにリバウンドを狙うような攻撃の仕方をするようになってきているのかなと思いますね。

 ファイナルは2試合の短期決戦なので、過去のデータからブロックのやり方を変える可能性もあります。ファイナル6最終戦でも、各チーム完全にバンチ(ブロック)で待っているシーンは少なかったです。データは出ているので、それを元に相手をはめ込んでいく。このローテーションではクイックがないから、クイックへの対策を捨てて、両サイドに張ってブロックしようとするとかね。ブロックから仕掛けるチームは多いですよ。そこの駆け引きはひとつ重要になるでしょうね。

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