山本隆弘が語るバレーの「駆け引き」 データで見るVファイナル展望<男子>

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サーブの狙いでチームの方針が見える

【画像:スポーツナビ、写真提供:Vリーグ】

 豊田合成は東レに天皇杯決勝で逆転負け(2−3)を喫してタイトルを取られてしまった。ファイナル6の最終戦でも嫌な負け方(0−3)をしているので、そこを乗り越えられるかがまず注目になります。その中でイゴールがどれだけサーブで効果を出せるか。ファイナル6の最終戦に関しては力が入りすぎてネットの下段に当たるミスも多かった。それがしっかりと入って、効果が出せるようになればいい勝負をするのかなと思います(イゴールのサーブ効果率はレギュラーシーズンの19.5に対し、ファイナル6は15.5)。

 さらに、サーブについてはお互いのチームが誰を狙っているのかを見ることによって、チームが何をしたいのかという「狙い」が見えてきます。よくある場面がウイングスパイカーを狙うケースです。東レでいうと米山(裕太)と鈴木(悠二)、豊田合成でいうと高松や山田(脩造)が入っている中で、それらを徹底的に狙っているのであればサイドからの攻撃を潰していきたいんだろうなということです。その中でも、前衛のサイドを狙っているのか。もしくはどちらか1人に狙いを絞っているのかを見ていくと、チームの方針が見えてきます。

ファイナルはデータが出尽くした状態

分析ツールの管理画面。シーズン中に選手の傾向や得意・不得意は分析し尽されている 【スポーツナビ】

 レギュラーシーズンから始まり、ファイナルにもなると互いのデータは出尽くした状態です。チームの傾向や、ある選手がシーズン中にどこから打つスパイクが得意なのか、逆に苦手なコースがどこなのかはバレている。それぐらいデータを使わないと厳しい世界になっています。

 レシーブの配置はコートを9分割し、さらにA〜Dに分かれている(計36分割)。その中でインナー気味のコースを守るために「7B」に入るなど、状況に応じてポジションを取ります。AとBの違いを距離にしたらわずか1歩ですけれど、相手が打ってからでは反応できない。だからその「わずか1歩」が大事なんです。リーグが長ければ長いほどデータは取り尽くされているので、9メートルのコートが真っ黒になるぐらいデータが取られて、相手の傾向は丸裸にされていると思ったほうがいい。

コートを36分割したイメージ図。データに基づいて、「わずか1歩」の違いにもこだわってポジションを取る 【スポーツナビ】

 データは場所だけではなく、人に対してもレシーブするポイント別の傾向が出せます。例えば、ある選手に対して向かって右側に打つと80%の確率でレシーブを返されるけれど、正面の高め(胸元)に打つと20%しか返せていない。だからそこを狙おうという戦略が立てられるレベルまで分析が進んでいる。

 だから極論を言えば、そこまでデータを取られ切っているので、コート内のスパイクコースというのはなかなか決まりません。そのため最近はワンタッチを狙うことが多い。チャレンジ(ビデオ判定)で見ないと分からないぐらいの細かな駆け引きをしないと点数が取れないんです。

 最近のバレーは難しいし、本当に細かくて奥が深い。その中でこんな勝負をしているのかということを知って試合を見ると面白いと思いますよ。

(グラフィックデザイン:藤井由佳、構成:豊田真大/スポーツナビ)

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