最高の“ビッグ4”擁するウォリアーズ デュラント加入の代わりに犠牲にしたもの
一挙一動に全米が注目
リーグ屈指の実力者と目されるデュラント(左)がウォリアーズに加入し、全米の注目を集めている 【Getty Images】
そう呟きながら、ゴールデンステイト・ウォリアーズのケビン・デュラントがロッカールームの中に消えていった。
11月18日(現地時間)、ボストンでのセルティックス対ウォリアーズ戦のこと。デュラントの前にはクレイ・トンプソン、スティーブ・カーヘッドコーチ(HC)が同じくロッカールームの入り口付近でメディア対応した。その後には、ドレイモンド・グリーン、ステフィン・カリーといったスターたちが続き、大量の記者たちの質問に答えていった。
NBAのゲーム時の取材は、コーチ会見以外はロッカールームで行われるのが通常。しかし、近年のウォリアーズ戦は事情が異なる。余りに多くのメディアが訪れるため、狭い空間では収拾がつかない。それゆえに、スター選手のインタビューはロッカー前のスペースを使って行われるのが恒例になった。
今シーズンはその騒ぎに拍車がかかった感がある。昨季はファイナルでクリーブランド・キャバリアーズ(キャブズ)に敗れて2連覇を阻まれたウォリアーズは、オフの間にアッと驚く補強策を行った。一般的にリーグ3本の指に入る実力者と目されたデュラントをFAで獲得し、全米のファンを驚嘆させたのである。
こうしてカリー、グリーン、トンプソン、デュラントと続く“ビッグ4”が完成。当然のように今季のウォリアーズの話題性は群を抜いており、82試合中で全米中継されるゲームはリーグ最多の28度を数える。アンチファンまで含め、一挙一動にシーズンを通じて莫大な注目が注がれることになったのだ。
数字に表れる総合力の高さ
原動力となっているのが、1試合平均116.8得点(2位ロサンゼルス・レイカーズの109.8得点を引き離してリーグ1位)という得点力だ。
「みんなに献身的にプレーしてほしい。4人のオールスターの間でボールが回ることが好ましい。シュートを打てるときにパスしてほしいという意味ではなく、流れと積極性を大事にしてほしいということ。オープンでボールが回ってくれば打てばいいし、そうでないならフリーの選手を見つける。どれだけイージーバスケットを挙げられるか。それこそがコーチとして求めていることなんだ」
18日のセルティックス戦で104−88で圧勝した際、カーHCはそう述べていた。その言葉通り、得点だけではなく、ウォリアーズは1試合ごとの平均アシスト30.8もリーグ1位(2位はアトランタ・ホークスの26.1)。クリエイティブなスターたちが、ここまでは流麗なパスワークを展開している。
今季のウォリアーズは、2014年まで4年連続ファイナル進出を果たしたマイアミ・ヒートに比較されることが多い。序盤戦の適応のスムーズさは、レブロン・ジェームズ、ドウェイン・ウェイド、クリス・ボッシュという“ビッグ3”に率いられていた当時のヒート以上だろう。
「ヒートの方が大変だったんじゃないかな。コート全体を有効に使い、プレーメーキングが得意という意味で、ウチの選手はより自然にフィットする。だからといって全員がすぐに噛み合うというわけではないが、(ビッグ3時代のヒートよりは)自然にプレーできるているのだろう」
カーHCが指摘する通り、ウォリアーズの“ビッグ4”はもともとアンセルフィッシュ(チームに献身的)なことで知られた選手たち。それに加え、カリー、トンプソン、グリーンの3人は過去数年にわたって一緒にプレーしてきただけに、デュラント加入後にすべてを作り直す必要はなかった。
ここまでカリー、デュラントは共に平均26得点、FG成功率47%、スリーポイント成功率41%を超えている。この適応の早さは、ウォリアーズの選手たちの総合力の高さを象徴しているのだろう。