立ち位置が入れ替わったコンテとペップ プレミアリーグ前半戦 監督通信簿

寺沢薫

“ビッグ6”が 抜け出す予想通りの前半戦

序盤は好調だったグアルディオラ(右)だが、前半を終えて最も評価を高めたのはコンテ(左)だった 【写真:ロイター/アフロ】

 ある意味、予想通りの前半戦だった。いわゆる“ビッグ6”が首位から6位までを締め(1位チェルシー、2位リバプール、3位マンチェスター・シティ、4位アーセナル、5位トッテナム、6位マンチェスター・ユナイテッド)、7位のエバートンとの勝点差は9ポイント。完全なる6強体制で、少なくともレスターが大波乱を巻き起こしていた1年前と比べれば、今季のプレミアリーグの海はかなり穏やかに見える。

 ただ、遠目から見れば静かな海も、トップ6という局所にフォーカスして見ると、やはり波が寄せては返している。思えば、前回の「監督通信簿」(関連リンク参照)を掲載した10月半ばの時点では下馬評通りにジョゼップ・グアルディオラの一挙手一投足が絶賛されており、アーセン・ベンゲルにマウリシオ・ポチェッティーノ、ユルゲン・クロップが彼を追い、アントニオ・コンテとジョゼ・モウリーニョがやや出遅れた印象だった。

 ところが、シーズン前半戦を終えた現時点で首位に立つのはコンテのチェルシーで、ペップ(グアルディオラの愛称)のシティはそこから7ポイントも離された位置に沈んでいる(チェルシーとトッテナムは1試合消化が少ないため暫定順位)。つまり、10月からの2カ月強で、コンテとペップの立ち位置が入れ替わったのだ。

コンテに最高点、ペップには最低点

グアルディオラ(左から2番目)はチームの守備の脆さを指摘されている 【写真:ロイター/アフロ】

 それを象徴するのが、1月2日付けの『ザ・サン』の記事だ。

「プレミアリーグのスーパースター監督バトル、コンテが輝く一方で、最大の失望はグアルディオラ」

 見出しからして強烈なこの記事で、同紙はトップ6の監督たちに10点満点で前半戦の点数を付け、コンテに最高点(9)を、ペップに最低点(5)を付けた。

 コンテについては、自分自身のスタイルを押し付けるのではなく、まずはモウリーニョ時代を踏襲する戦術を試した上で、リバプール、アーセナルに連敗した9月の2試合を機に勇気を持ってスタイルを一変させたことを高く評価。プレミアでは異色の「3−4−3(3−4−2−1)」システムに舵を切ってから現在までリーグ記録タイの13連勝を成し遂げ、その過程でエデン・アザールやジエゴ・コスタの自信をよみがえらせたことも重要だったとしている。

 一方、ペップについては「イングランド・フットボールで最もリッチなクラブを率いる男にしては期待外れ」「選手と監督にかかった金額を考えれば“平均的”以外の何物でもない」とバッサリだ。夏に大金を投じた新戦力がさほど結果を出していないことや守備のもろさを引き合いに出し、特に「GKジョー・ハートとクラウディオ・ブラボを入れ替えた決断は誤っていた」とまで書いている。また「ハイプレスでパスゲームを抑えようとするチームに対するリアクションが必要だが、厄介なことにグアルディオラは自分のアプローチを変える気がないように見える」とも指摘している。

イングランド各紙がコンテを称賛

コンテがシステムを「3−4−3」に変更してから、アザール(左)やコスタが躍動している 【写真:ロイター/アフロ】

 この年末年始で、他メディアもこぞってシーズン前半の「ハーフターム・レポート」と銘打った記事を掲載しているが、どこを見ても並ぶのはコンテへの礼賛だ。たとえば、チェルシーに「A+」という最高評価を付けた『インデペンデント』の評価は以下。

「昨季、モウリーニョ政権でのカオスがはるか昔に感じる。コンテはイタリア式の手腕でチームを再活性化し、首位に導いた。欧州カップ戦がないことが助けになったが、それでも相手をシャットアウトする守備は素晴らしい。3−4−3がイングランド・フットボールの次なるブームとなり、コスタとアザールも再び王者に戻った。1年の“夏休み”からようやく帰ってきた」

 一方、こちらもシティに対しては「B」という辛口評価で、こんな寸評が続く。

「10月から歯車が狂い始めた。12月上旬、チェルシー、レスター相手の2つのヘビーな敗戦は、重圧にうまく対処しなければいけないペップの戦術においてDFとGKが十分でないことを示した。トップ3フィニッシュは可能だが、チェルシーとリバプールとは違ってまだ“未完成”で、セルヒオ・アグエロやケビン・デ・ブライネ次第のチーム」

 事実、12月の直接対決ではチェルシーが3−1でシティを完全撃破した。

「誰もまだ、コンテの3−4−2−1システムに対する“答え”を見つけることができていない。シティもまた、チェルシーのカウンターがどれほど破壊的なのかを証明しただけだった。タイトルレースはまだ長いが、チェルシーは効率のよさと、シティにない決定力を証明し始めている」

 そう書いたのは『テレグラフ』の記者で、記事の見出しは「コンテはどうやってペップを出し抜いたか」というものだった。

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著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、株式会社フットメディア(http://www.footmedia.jp/)在籍時にはプレミアリーグなど海外サッカー中継を中心としたテレビ番組制作に携わりながら、ライター、編集者、翻訳者として活動。ライターとしては『Number』『フットボリスタ』『ワールドサッカーキング』などに寄稿する

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