立ち位置が入れ替わったコンテとペップ プレミアリーグ前半戦 監督通信簿

寺沢薫

株を上げるモウリーニョ・ユナイテッド

ポグバ(左)をインサイドハーフで起用し始めてから調子を上げているのがモウリーニョのユナイテッドだ 【写真:ロイター/アフロ】

 また、シティは大晦日(現地時間)のリバプール戦も0−1で落としてしまった。この試合後、『スカイスポーツ』の解説を務める元イングランド代表DFジェイミー・キャラガーはシティが優勝はおろかトップ4にも入れないかもしれないという持論を展開している。その理由は守備だ。

「前の5〜6選手はリーグ最高レベルだと思う。特にアグエロ、デ・ブライネ、シルバはおそらくベストだ。しかし、4バックとGKは私から見てトップ4のクオリティーじゃない。トップ8レベルだね」

「素晴らしいスタートを切ったことで、相手チームがシティを研究し、どこが弱点か考えるようになった。(守備陣が)プレッシャーをかけられると弱いんだ。トップ4を陥落する恐れがあるように感じる。特にマンチェスター・ユナイテッドのプレーぶりを見ているとね」

 そう、ペップ・シティの株が急落中なのに対し、実は10月のチェルシー戦で0−4の完敗を喫したのを最後にプレミア11試合連続無敗、目下6連勝中のモウリーニョ・ユナイテッドが、徐々にだが、じりじりと株を上げているのだ。

 エンジンのかかりがおそかったため、シーズン前半戦の採点で言えば『インデペンデント』が「C」という低評価を付けたのも仕方がない。ただ、一方で同紙はこんな主張も付け加えている。

「ズラタン・イブラヒモビッチとポール・ポグバがしばしばワールドクラスのクオリティーを示しており、中盤に定着したマイケル・キャリックがチームにおける重要性を高めている。ついにパフォーマンスを結果に結びつけ始めた」

 続いて、ここ数年は退屈で味気ない古巣のパフォーマンスを「こんなのマンチェスター・ユナイテッドじゃない」と思いながら見ていたという現解説者のギャリー・ネビルも、現在の調子については「今はエキサイティングなカウンターアタックがある。ポグバも、イブラヒモビッチもどんどんよくなっている」と光明を見いだしているようだ。

 実際、ウェイン・ルーニーを完全に先発から外し、キャリックをアンカーに固定してアンデル・エレーラとポグバがインサイドハーフに入る「4−3−3」という最適解を見いだして以降、ユナイテッドは尻上がりに調子を上げている。距離感が近づいたポグバとイブラヒモビッチがそろってゴールに絡むシーンを増やし、ケガで出遅れたヘンリク・ムヒタリアンも存在感を示し始めた。

 また、1月2日のウェストハム戦(2−0)を「醜く勝つ能力を示した。それは近年のオールド・トラッフォードに欠けていたクオリティーだった」と評したのは『インデペンデント』だったが、しぶとく勝ちを拾うユナイテッドらしさ、モウリーニョらしさが見られるようになってきたのも好材料だ。

3月まで毎節ビッグ6の直接対決が続く

2位リバプールは次節でマンチェスター・ユナイテッドと対戦。ビッグ6の直接対決が続く 【写真:ロイター/アフロ】

 コンテが飛び出し、ペップが失速し、モウリーニョが猛追の準備を整えた。もちろん、クロップにベンゲル、ポチェッティーノも、それぞれに守備や勝負弱さ、選手層といった課題を抱えて四苦八苦しながらも、おおむね期待を裏切らない出来で上位を維持している。「監督たちの世界選手権」は、ここからの後半戦も熾(し)烈を極めることだろう。

 日本時間の4日深夜には、第20節の最後を飾るトッテナム対チェルシーのロンドン・ダービーが待っている。翌21節にはユナイテッドとリバプールのライバル対決が控え、22節にはシティ対トッテナム、23節にはリバプール対チェルシーといった具合に、ここから3月4日の第27節まで、イングランドのどこかで毎節ビッグ6の直接対決が続くことになる。その一戦一戦の結果を受けて波が上がり、海の様子が変わっていくことは間違いない。

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著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、株式会社フットメディア(http://www.footmedia.jp/)在籍時にはプレミアリーグなど海外サッカー中継を中心としたテレビ番組制作に携わりながら、ライター、編集者、翻訳者として活動。ライターとしては『Number』『フットボリスタ』『ワールドサッカーキング』などに寄稿する

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