“勝ち組監督”4人の共通点とは? リーグ戦序盤 プレミア監督通信簿
「パーフェクト・スタート」を決めたペップ
ロケットスタートを決めたマンチェスター・シティのグアルディオラ(左)。だが、ポチェッティーノ(右)率いるトッテナムが第7節で初めてシティに土をつけた 【写真:ロイター/アフロ】
「彼のパスゲームはあっという間にチームに根付いた。フルバックがセントラルMFに変身する光景はすっかりおなじみとなり、ジョー・ハートとヤヤ・トゥーレがチームから追い出され、練習場のWi−Fiも取り除かれ、ピザを食べるのも禁止された」
そう『ガーディアン』紙が綴ったように、ペップはリーグ戦開幕6連勝という文句なしの結果を出しただけでなく、数カ月でクラブを自分色に塗り替えてしまった。その絶大な影響力から、現地メディアには「パーフェクト・スタート」という言葉が躍った。
完璧主義者のペップはそれでも「理想からはほど遠い」と語ったが、それがただの謙遜ではなかったことを白日の下にさらしたのは、第7節で彼に初めて土をつけたトッテナムのマウリシオ・ポチェッティーノ監督だった。
『スカイスポーツ』は「トッテナムはどのようにペップを破ったか」という分析記事で、シティのビルドアップを完璧に封じた強烈なハイプレス戦術を絶賛した。疲れ知らずで、攻守に隙のないポチェッティーノ流は今季も健在。ここまで5勝3分けとリーグ唯一の無敗で3位につけている彼のチームは「タイトルレースでシティに対抗できるバランスがある」『ガーディアン紙』とこちらも高評価だ。
クロップの手腕は称賛、ベンゲルにも注目が集まる
就任1周年を迎えたクロップ監督の戦いぶりが賞賛を集めている 【写真:ロイター/アフロ】
「テンポがいいし、プレッシングが素晴らしい。全員が同じ波長にいるようで、バランスが取れている。かなり前に比重を置き、相手を押し込み、自由と創造力を発揮している」
そうコメントしたのは、リバプールOBでBBC解説のダニー・マーフィー。その他にも「推進力があり、攻撃的なセクシーフットボール」と称えるのはアンディ・コールで、「冗談抜きで優勝するチャンスがある」と言ったのはドワイト・ヨークだ。宿敵マンチェスター・ユナイテッドのOBでさえ、クロップのチームには首ったけなのである。
また、意外と言ったら失礼かもしれないが、契約最終年となる今季がラストシーズンと言われるベンゲルの手腕にも、あらためて注目が集まっている。今夏も一流ストライカーの獲得には失敗したが、それを逆手にとったアレクシス・サンチェスの最前線起用がハマっているのだ。
興味深かったのは、今季のガナーズが「アンリ&ベルカンプ時代に回帰している」という仮説を立てた『テレグラフ』紙の記事だ。最前線のサンチェスがティエリ・アンリ役を、セカンドトップのような位置取りをするメスト・エジルがデニス・ベルカンプ役を担う「変則型4−4−2」で、彼ら2人のスペースメークに呼応して両翼のセオ・ウォルコットやアレックス・イウォビがロベール・ピレス、フレデリック・リュングベリのごとく中央へ入ってくる流動的な攻撃が「インビンシブルズ(2003−04シーズンの無敗優勝時のチーム)」に似ているという主張だ。“誰も定位置でプレーしない”からこそ、相手を混乱に陥れることができる攻撃は、チェルシーを3−0で撃破した第6節でも証明された。
コンテは苦戦も、評価はまだ“据え置き”
“勝ち組”監督たちに共通するキーワードは「プレッシングゲーム」。アーセナルのウォルコットも劇的に運動量が増えた 【写真:ロイター/アフロ】
『スカイスポーツ』は10月に入って「インテンシティーの高いプレッシング戦術がプレミアにおける成功のレシピである」という特集記事を掲載したが、それによると、第7節終了時点で「スプリント回数」のリーグ上位4傑はリバプール、シティ、トッテナム、アーセナルで、彼らは走行距離でも軒並み上位につけている。元々ハイプレスが代名詞のペップ、クロップ、ポチェッティーノに加え、ベンゲルのチームも今季は前線がよく動き、特に絶好調のウォルコットはリーグ戦5得点という攻撃面だけでなく、劇的に運動量が増え、タックル数がFWに限ればリーグ最多というデータが示されている。
本来なら、チェルシーのアントニオ・コンテ監督も同じ哲学を共有できるはずだが、ここに名前が挙がらないほど、元イタリア代表監督は苦戦している。開幕3連勝と出足こそまずまずだったが、9月にリバプール、アーセナルに連敗すると株価が急落。辛口の『ザ・サン』紙はすかさず「チェルシーが優勝できない7つの理由」という記事を掲載し、チームのバランスが悪く守備が不安定なこと、移籍期限最終日にパリ・サンジェルマンから買い戻したDFダビド・ルイスが「パニック買い」であることなどいくつかの問題点をあぶり出し、10月には「チェルシー、コンテを解任か」という見出しまで打った。さすがにこれはゴシップレベルで、すぐにクラブが否定したが、守備の懸念に関してはタブロイド紙以外も総じて指摘している。
ただし、第8節のレスター戦(3−0)でルーベン・ロフタス・チーク、オラ・アイナ、ナサニエル・チャロバーと下部組織出身の若手を起用したことは、おおむね好意的に受け止められており、総合評価はまだ“据え置き”といったところか。