多極化が進むフットボール界の勢力図 C・ロナウド、メッシと主役は変わらず

最新テクノロジー、汚職などの議論も本格化

イブラヒモビッチは世界最高の選手の1人とみなされてきたが、母国がW杯本大会に出場できず、個人タイトルには恵まれていない 【写真:ロイター/アフロ】

 例えば、近年ズラタン・イブラヒモビッチは世界最高の選手の1人とみなされてきたが、彼は自身の能力やタレントとは関係なく、母国スウェーデンがW杯本大会出場を逃したがために、候補にも挙がらなかったことが一度ならずあった。

 その点、C・ロナウドは強運の持ち主だ。昨季のCLでは決勝トーナメント1回戦と準々決勝の対戦相手に恵まれ、散々なプレー内容で大苦戦を強いられながらも勝ち進むことができた。ユーロ・フランス大会でも同様に、ポルトガルは決して褒められたものではない試合内容で辛うじてグループリーグを突破し、その後も接戦を繰り返しながら決勝へとたどり着いた。そして決勝では開催国のフランスを延長戦の末に破ったものの、当のC・ロナウドは前半途中にけがで交代を強いられていた。

 負傷でピッチを離れていた時期はあったものの、選手個人としては私はメッシの方が個のプレーレベル、継続的な活躍という点で、C・ロナウドを上回っていたと考える。ただ現状、個人賞の選考基準が他のところにあることは先に述べた通りだ。

 ヨーロッパのフットボール界に話を戻そう。選手のレベルや注目度という点では、今もプレミアリーグが世界最高のリーグであることに変わりはない。リーガ・エスパニョーラはヨーロッパの前衛に立つ2つのメガクラブ、レアル・マドリーとバルセロナだけでなく、彼らを脅かす存在に成長したアトレティコ・マドリー、さらにセビージャやビジャレアルといった強豪クラブを擁する。ただリーグとして右肩上がりに成長しているのはボールを重んじ、常にスタンドを満員に埋めているブンデスリーガだろう。

 最新テクノロジーを導入した上でどう生かすべきか。長年この世界をむしばんできた汚職を根絶し、そろそろ倫理を元にした組織運営を実現すべきではないか。21世紀も17年目を迎えようとしている現在、フットボール界では他にもこうした議論が本格化してきている。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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