快進撃を続ける昇格組ライプツィヒの強み 他の追随を許さない「反応速度」の速さ

中野吉之伴

第16節まで戦って2位と躍進

昇格組ながら第16節終了時点で2位につけるライプツィヒ 【写真:ロイター/アフロ】

 ドイツサッカーとライプツィヒの関連性でまず思い出すのが2005年12月9日。2006年ドイツワールドカップ(W杯)を前にグループリーグ組み合わせ抽選会がここで行われたのだ。W杯開催都市の一つであるライプツィヒは旧東ドイツ圏唯一の町として注目を集めていたものの、その一方で「ブンデスリーガクラブもないのにこれだけ大きな箱(スタジアム)を作って、その後どうするんだ」という極めてまっとうな疑問も浮かび上がっていた。それも無理はない。当時ここをホームスタジアムとして使用することになっていたザクセンライプツィヒはオーバーリーグ所属だったのだ(現在の5部リーグ相当)。

 W杯開催中は確かに盛り上がった。だが祭りも終えんの時を迎えると、「無用の長物」「税金の無駄遣い」という声ばかりが聞こえるようになってしまう。取材で訪れたときに少し郊外に予約したホテルの周りは夜になると明かりが極めて弱く、周りに家がほとんどない田舎のホテルのほうが明るい感じがするほど。薄暗い夜道をとぼとぼと歩き回ってようやく小さなケバブ屋さんを見つけたことを思い出す。

 あれから、10年。突如ブンデスリーガに現れたRBライプツィヒというチームがドイツのサッカーファンを驚かせている。昇格クラブながらドルトムント(1−0)、レバークーゼン(3−2)、シャルケ(2−1)と並みいる強豪を次々に撃破。今年最終戦となった第16節のバイエルン戦は4連覇中の王者に力の差をまざまざと見せつけられ、0−3で一蹴されてしまった。監督のラルフ・ハーゼンヒュットルも「前半はノーチャンスだった。自分たちがベストパフォーマンスを出せていたとしてもきっと難しかったことだろう」と素直に脱帽。とはいえ、偶然ではなく自分たちの力で2位(第16節終了時点)という位置に付けている彼らへの評価が下がることはない。

ラングニックが植え付けたサッカー哲学

スポーツディレクターのラングニック(左)とハーゼンヒュットル監督の功績は大きい 【Getty Images】

 ライプツィヒのサッカーを語るうえで欠かせない存在が現在スポーツディレクターとしてチームを統括するラルフ・ラングニックだ。ラングニックはまだドイツが「フィジカルだ! ツバイカンプフ(1対1の競り合い)だ!」という目線しかなかった1990年代から戦術の大切さを説いていた。そのため当時は「変わり者」扱いを受けていたこともあったが、世界のサッカーはまさに彼が思い描いていた通りに変わってきた。常に先を行く考えを持つラングニックは06年から11年までホッフェンハイムで監督を務め、チームを3部から1部へと導き、昇格初年度には前半戦を首位で折り返す偉業を成し遂げていた。

 前線からの激しいプレスでボールを奪い、そこから一直線にゴールを狙う彼らのサッカーはドイツの現場に新風を巻き起こした。そして12年にはレッドブルザルツブルクとRBライプツィヒ両クラブのスポーツディレクターに就任し、自身のサッカー哲学をクラブに植え付けていった。

 ラングニックは自身のサッカー観について、ドイツサッカー協会公認A級・プロコーチライセンス(UEFA・A/Sライセンス)保持者対象に行われる国際コーチ会議で10年に特別講師として招かれたときにこんなふうに話をしていた。

「攻撃において何が大事か。それはスピードとプレーアイデアだ。アイデアといっても、どこでどのようにスピードを上げるのか、あるいは相手のスピードを落とさせるのかがポイントになると考えられるので、そういう意味でも一番大切なのはスピードだと言える」

「ボールを奪われることをミスだと捉えないことだ。パスミスをせずにゴールまで迫ると考えてはだめなのだ。パスミスもゴールに向かうための大事なプロセスの一つ。奪い返すことも含めてのチャレンジ。パスを出せるかもしれないスペースがある時に、0.5秒迷うだけでそのスペースは消えてしまう。勇気がなければ。若い選手にとって、リスクを冒して積極的にプレスを仕掛け、ボールを奪い取り、素早く仕掛けていくサッカーは冒険のように魅力的なんだ」

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著者プロフィール

中野吉之伴

1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで経験を積みながら、2009年7月にドイツサッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU15チームで研修を積み、016/17シーズンからドイツU15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

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