敗戦の若きオランダ代表に送られた拍手 “ビッグ4”を欠くも、手ごたえを得る
一枚も二枚も上手だったフランス
ポグバのゴールでフランスに0−1で敗れたオランダだが、試合後には観客席から拍手が送られた 【Getty Images】
それでも、ホームで戦うオランダに“勝ち点1”を奪うチャンスは十分あった。47分にはストライカーのビンセント・ヤンセンが、ラファエル・バランの密着マークを受けながらターンして、ゴールの至近距離からシュートを放つもニアサイドへ外した。61分には右サイドバック(SB)のリック・カルスドルプのクロスを、フリーのメンフィス・デパイがダイレクトシュートを放ったが、枠を捉え切れなかった。89分にはビンセント・ヤンセンがヘッドで落としたボールを、メンフィスがボレーでシュートしたが、フランスの守護神ウーゴ・ロリスの守備範囲に飛んでしまった。
「後半、“2つのチャンス”を作ったんだけど……。何ていうかなあ、決定機に“フィットネス”を欠いてしまった」(試合終了直後のMFケビン・ストロートマン)
相手ゴール前に至るまでの、オランダのハードワークは素晴らしかったが、シュートでの余力が足りなかったのかもしれない。オランダにとっては力を出し尽くした上での負けだった。だからこそ、タイムアップの笛が鳴った後、アムステルダム・アレーナでは観客席から拍手が送られた。最初は控えめに、やがて大きく広がっていったファンのねぎらいの拍手は感動的ですらあった。
「チームが成長しているのを感じる」(ファン・ホーイドンク)
ベラルーシ戦では4−1で勝利し、結果を残したオランダ 【写真:ロイター/アフロ】
元プロフェッショナルの声はどうだろう。この夜、NOS局の解説を務めたファン・ホーイドンクは「今日のオランダがよくやったのは、試合後のサポーターの拍手を見ても明らか。(W杯予選の)スウェーデン戦(9月6日、1−1)、ベラルーシ戦(10月7日、4−1)を見ても、チームが成長しているのを感じる」と、やはりオランダの健闘をたたえていた。
先のユーロ(欧州選手権)予選でチェコ、アイスランド、トルコに敗れて本大会に進めず、クラブチームも欧州カップ戦で結果を残せぬ惨状に、オランダは今、プライドをかなぐり捨てて立て直しを図っている最中である。質の高いゲームをしたスウェーデン戦、さらに結果を残したベラルーシ戦を見て、ファンもメディアも「自分たちの代表チームは何かヒントをつかんだ」と手応えを感じているのである。
かつてのオランダサッカー界はポゼッションで相手を上回って、ボールを失ったら敵陣で回収して攻め続ける“ホーラント・スホール(オランダ派)”と呼ばれる攻撃サッカーを目指していた。しかし、今のオランダはコンパクトに守備陣形を整え、規律と組織にアクセントを置いたサッカーで結果を求めている。
フェイエノールトをリーグ2位に導いたロナルド・クーマン(11−12、13−14シーズン)、14年のW杯ブラジル大会で3位という好成績を残したルイ・ファン・ハールが“4−3−3”と“3−5−2”のフォーメーションを使い分けた戦術は、ややタイムラグがあってからオランダリーグでも頻繁に見られるようになってきた。
昨季から、PSVのフィリップ・コクー監督もチャンピオンズリーグの舞台で“4−3−3”と“3−5−2(ないしは3−6−1)”を使い分け、決勝トーナメント1回戦でアトレティコ・マドリー相手に2試合合計0−0という激闘を演じてみせた。私は昨季のPSVを“ダッチ・リアリズム”と名付けたのだが、今年の9月、『アルヘメーン・ダッハブラット』もまたフェイエノールトやPSVのサッカーを“ニュー・リアリズム”として報じている。