オランダが「ロッベン・システム」へ回帰 ウェールズ戦で見せた現実的な戦い方

中田徹

ユーロ出場権を逃し、立場が逆転

ユーロ出場権を逃したオランダは、ロッベンを生かす5−3−2システムで新たな船出を勝利で飾った 【写真:ロイター/アフロ】

 2016年夏のバカンスに向けて、早くもオランダ人が飛行機やホテルの予約を始めているという。ユーロ(欧州選手権)やワールドカップ(W杯)が開催される年のオランダ人は、オランイェ(オランダ代表の愛称)がいつ、どこで、どんな対戦相手と戦うか決まってから旅程を立てていたのだが、16年の夏に関してはもうその心配は必要ない。オランダ代表は16年、フランスで行われるユーロの出場権を逃してしまったのだ。

 陸上短距離界のプリンセス、ダフネ・シパーズを応援するためリオデジャネイロ五輪に行くオランダ人も多いらしい。一方、例年ならオランダ人に人気のコート・ダジュールは、ユーロ開催国内のリゾート地ということもあってオランダ人には居心地が悪く、敬遠されるだろうという噂もある。傷心のオランダ人はサッカーを忘れるための夏を過ごそうとしている。

 11月のインターナショナル・マッチウィーク、オランダは13日にアウェーでウェールズと戦った。オランダにとってウェールズという国は、08年ユーロ、14年W杯の直前に、ホームで壮行試合として戦う相手だった。それが今回は立場が逆転し、ユーロに出場するウェールズのスパーリングパートナーとしてオランダは敵地に赴かなければならなかった。悲しいかな、それが今のオランダ代表の実力である。

スナイデルとロッベンのホットラインが機能

ロッベン(左)と抜群のコンビネーションを見せたスナイデル(右) 【写真:ロイター/アフロ】

 今回のユーロ予選でオランダと戦った国の中で、唯一アイスランドは調子がピークを迎えていたが、チェコ、トルコの両国はここしばらく低迷に喘いでおり、普通に戦っていればオランダが勝って当然の相手だった。しかし、オランダは“普通”に戦うことができず、ビルドアップや守備のミスを突かれて自滅を重ねた。だからオランダ人は、「今の戦力ではポゼッションで相手を押し込み、攻撃的に戦うオランダらしいサッカーをピッチの上で表現して試合に勝つのは不可能」と自己を分析している。ウェールズ戦を前に、『アルへメーン・ダッハブラット紙』は「(ダニー・)ブリント監督が守備的なMFを2人並べても驚いてはいけない」と書いたが、実際にオランダは5−3−2というかなり守備的な布陣でウェールズ戦に臨んだ。

 5−3−2は14年W杯で、ルイ・ファン・ハール監督の率いたオランダが3位という望外な成功を収めた時と同じフォーメーションである。ただし、W杯の時のオランダは中盤の3人がマンツーマンで相手に付くことが多かったのだが、ブリント監督の5−3−2はゾーンと少し中盤のシステムが違っている。それでも、2トップの一角、アリエン・ロッベンの能力を最大限に生かすという点では同じ。ファン・ハールの5−3−2にしろ、ブリントの5−3−2にしろ、「ロッベン・システム」の色合いが大きいのは一緒であった。

 試合の開催地カーディフは雨が振り、ピッチ状態も悪く、さすがのロッベンもキックオフ直後はつまらないミスがいくつかあったが、徐々にピッチコンディションにアジャストしていき、快速とテクニックがさえだした。とりわけ、中盤の底でプレーしたヴェズレイ・スナイデルとのコンビは秀逸だった。スナイデルからのミドルパス一本で、ロッベンがウェールズ守備陣の背後をとったケースが何回あったことか。この日、ロッベンはカウンターから2ゴールを決め、チームの3−2の勝利に貢献したが、決勝ゴールの3点目もスナイデルとロッベンのホットラインから決まった。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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