ハリル「先発で出ていない選手も信用」 W杯最終予選 イラク、豪州戦メンバー発表

スポーツナビ

香川はシュールレやゲッツェと競争している

報道陣に対しても、ハリルホジッチ監督は「フットボールの知識をしっかり身につけてほしいと思う」と語った 【スポーツナビ】

――日本代表の主力が所属チームで(試合に)出ていない現状をどう考えているか。また、Jリーグの選手を優先させる考えはないのか?

ハリルホジッチ 毎節、われわれのスタッフが50人ほどの選手を調査している。もちろん入れ替わりもあるが、毎節分析している。永木、齋藤、川崎の中村(憲剛)、大島、小林悠。中島も井手口(陽介=G大阪)も好きな選手だ。こういったところに入れてもいいかな、追跡してもいいかなと思っている。そして合宿に毎回呼ぶなどして慣れさせて、自信を持たせるということをやっている。

 それから海外(組)との比較だが、香川の競争の状況を想像してみてほしい。ドルトムントは世界的なクラブであり、シンジは(アンドレ・)シュールレや(マリオ・)ゲッツェと競争している。かなりハイレベルな選手たちだ。シンジはここで先発を獲得するために、狂ったように競争しなければならないし、狂ったようにトレーニングしないといけない。それは、本田も長友も長谷部も一緒だ。そして彼らが先発で出られなかったときには、どのような補足トレーニングをしなければならないか、彼らは完ぺきに把握している。また、私が「このようなトレーニングをしてほしい」というのも、彼らは理解している。

 清武も(サミル・)ナスリと競争しなければいけない。CLで出ているような強豪クラブで、彼らは競争している。日本の歴史で初めて、これほど同時期にCL出場チームに(日本人選手が)所属しているが、しかし先発を取るのは簡単ではない。海外でプレーしているいい選手がいれば、それは日本代表に呼ぶ。ただし、香川よりもうまい選手が他にいるだろうか。そういったものを私は確認したいし、この目で見ておきたい。とにかく今回は、問題が起き過ぎている。最初に試合で、速いスピードに対応できる選手が準備されていなければ、それは重要な問題になる。イラク戦はかなりのことをテストできる。まずは気持ち、選手の野心が気になる。

 少しだけ皆さんに紹介したい。(手で選手名を隠した資料を見せながら)これは私が(監督に)就任してからのチームの走行距離だ。一番下を見てほしい。国内組だけで臨んだ東アジアカップでの走行距離だ。今、最もいい状態での試合より10キロくらい少ないのが東アジアカップのチームだった。これを皆さんに考えてほしいと思い、見せている。トレーニングのインテンシティー(強度)も調査している。われわれが、どのような(プレー)強度を求めたのかも把握している。前回の火曜日は、ちょっとやり過ぎたのかなと思っている。それは私も頭に入れておかなければならない。

 戦術をどこまでやるのか。私は全部やりたいので、そこは変えられない。全員が、すべてを把握しなければならない。すべてのトレーニングで、すべてをテストしている。何人かの選手のクオリティーもキャパシティーも理解している。ただ、先発をずっと取れなかったら、かなり問題だ。3カ月、4カ月と出られなかったら、まったく違う問題が起こる。それは起きてほしくないことだが。

――会長、前回のUAE戦でゴールを割った割らないの問題、あるいは追加副審がなぜいないのかという問題について「AFCに抗議する」と言っていたが、その後どうなったのか?

田嶋 すでにお伝えしたとおり、すぐにマッチコミッショナーに(ゴールに)入っているという証拠とともに抗議文を出しました。そしてAFC(アジアサッカー連盟)にもFIFA(国際サッカー連盟)にも同じものを送っています。(追加)副審を立てるかどうかというのは、次の試合からすぐにできるものではないです。大会を始める前に決めるものであって、われわれはひとつのアイデアとしては考えていますが、UEFA(欧州サッカー連盟)のように追加副審ができるかというと、それはできません。

 ただわれわれとしては、追加副審の問題や他のコンチネンタル(大陸)から審判を呼べないかとか、もうひとつはビデオチャレンジ。全部をチャレンジするのではなく、決定的なゴールのときにチャレンジするようなルールに変更できないかということを、これはIFAB(インターナショナル・フットボール・アソシエーション・ボード)にしっかり訴えていきたいと思っています。

――選手に話した戦術の9つのテーマとは何か。またイラク戦、オーストラリア戦、それぞれのテーマは何か。

ハリルホジッチ 9つのテーマに関して、守備のテーマと攻撃のテーマがあった。守備では相手に3人ほど気をつけなければいけない選手がいた。10番(オマル・アブドゥルラフマン)が外に開いたときにどうブロックするか。中に絞った時にどうするか。タテの高い位置、そして低い位置にいたときにどうするか。7番(アリ・マブフート)は背後に走るタイプの選手だったので、どのポジションからどの角度に走っていくのか。それから11番(アハメド・ハリル)は2点取ったが、彼のポジションがどこから始まるのか。そういったところをトレーニングした。今のは守備のところで、どうやってファウルをせずに止めるかという話をした。

 それから攻撃。われわれの展開の仕方、どこで仕掛けるか、さまざまなテーマをやった。インテンシティーは高くはないが、フリーにしてポジションを取らせて、説明をして、というのを1回のトレーニングでやった。本当は10日かけるトレーニングだが、それを1回でやった。ただし火曜日は試合の2日前ということで、オフェンス面では連続プレーということをやった。私の分析では(UAE戦は)悪い試合ではなかった。私も自分自身を批判するが、このチームは、アジアの中では攻撃に関しては良い展開をしていると思う。

 イラクを含めて、すべてのチームを(映像で)見たが、毎試合、われわれは少なくとも12回の決定的チャンスを作り出している。UAE戦では13回、タイ戦では12回、決定的チャンスがあった。アジアでは、より美しいフットボールかなと思う。ただ、高いレベルではないのが、得点を仕留めるところ。さらに、あまり良くないクオリティーとして、修正しなければいけないのはどこかということ。唯一、ゴールがなかったのは(2次予選の)シンガポール戦。ほかの試合では、すべて得点している。攻撃のクオリティーはかなり高いし、今のところ私が要求したかなりのところをやってくれている。ただ得点を取るというところは伸ばさないといけないと思っている。

 イラクに対して、どういう戦術で臨むかについてだが、次の火曜日に戦術トレーニングができるかどうかは分からない。イラクやオーストラリアが、どのようにプレーしてくるかは知っているし、把握している。今回、映像を見る時間も短くして、オーストラリアとイラクの映像を、あらかじめ(選手に)送っておくという新しくトライをしようと思う。2試合ほど、合宿前に選手に見ておけよと。見てくれると期待しているが。

 そして、合宿ではミーティング時間を短くする。ミーティング中に寝ている選手がいるので。それは時差の関係もあるのだが。皆さん、笑うかもしれないが、これは事実だ。私も冗談を言うのは好きなのだが、冗談が言えない状況なので(笑)。タクティクスの練習をするかどうか、私は決めかねているが、それは現場を見て判断したい。ただ、事前に彼らに情報を与えるというトライはしておきたいと思う。先発で誰が出るのかもまだ決めていない。最初はこれでいって、最後の20分にスピードアップしたいというプランもあるかもしれない。これも戦術のチョイスによって変更していく。選手が到着して、フィジカル的なフィードバックをもらってから決めようと思う。

オープンな統計は皆さんの手元にある

――先ほど「言い訳ではない」と現状をよく説明してくれたと思うが、日本代表に欧州組がたくさんいて、彼らが自分のクラブでレギュラーを取れていなくて、しかも予選の時は飛行機で長時間移動をしてくるというのは就任前からご存じだったと思うし、2次予選でも経験している。それを踏まえて日本サッカー協会と契約をしているわけだから、その壁をどう打ち破っていくのかが監督の仕事だと思うが、距離、日程、レギュラーなどに難があるということを説明するというのは、監督は言い訳でないとおっしゃるが、私には言い訳にしか聞こえない。それをどう打開してくれるのかを言ってほしい。また、会長はどうハリルホジッチ監督の言葉をとらえているのか。

田嶋 現状を説明してくれたと認識しています。先ほども長い時間話しましたが、そういう中で、この代表がどう戦って、イラク戦をどう勝つかという説明を受けています。そういう意味では、この現状の中で、イラク戦に勝つための準備を十分にしていると認識しています。

ハリルホジッチ 少し理解していただけないことがあるのかなと感じる。意見は尊重するが、意見を言うには、あなたに能力があるのかなと思う。まず、私が日本サッカー協会とサインする前に、この困難を日本サッカー協会に伝えるほうがいいのかどうか。もっともっと難しい目的があった。あなたが言い訳だというのは間違いだと強く言うが、私はこの日本のプロジェクトに本当に入り込んでいる。本当に初日から、サインした時から100%、プロジェクトに入り込んでいる。100%だ。(田嶋)会長を信頼している。それから大仁(邦彌)前会長も私を選んでくれたので信頼している。彼らは私が何をすべきかというのを全部把握してくれている。

 そしてフットボールの知識をしっかり身につけてほしいと思う。今の日本代表がどのような発展を遂げたか、特にオフェンス面で。毎試合ご覧になれば分かると思うが、私が就任する前と就任してからと(比べると)、たくさん新しいことが見られたと思う。それに関しての皆さんの意見だと思うが、すべての統計がここにある。オープンな統計は皆さんの手元にあると思う。

 私の目的はもっともっと日本のフットボールを向上させることだ。いつか世界の強豪国と対等に渡り合えるまでにしたいと思っている。ただ、トレーニングをグラウンド上でする時間をほとんど与えられていない。これは言い訳ではない。(質問を)皮肉な冗談かもと受け止めたが、それを皆さんから言われたとして、何かが変わるのか。私は何をしなければいけないか分かっている。A代表の発展を見てほしい。スペクタクルな試合もあった。私が就任してからの統計も明らかになっている。私の考え方に反対するのは全然構わないが、ただ言い訳ではない。それは少し理解してほしいと思う。皮肉な冗談は言い続けてください。私の仕事はなんら変わらない。

――UAE戦とタイ戦の決定機の話があったが、得点を伸ばす努力が必要だということだった。守りを固めてくるであろうイラク、高さのあるオーストラリア相手に、長澤やハーフナー・マイク(ADOデンハーグ/オランダ)のようなヘディングの強い選手も入れて、攻撃のバリエーションを増やすのもいいのではないかと思うが、今回、攻撃陣は今までと変わらない選手を選んだ。監督の決断には敬意を表するが、あらためて決定力を上げるために、FW陣に求めるものを聞きたい。

ハリルホジッチ 競争からチョイスをしなければいけないが、長澤もマイクももちろん追跡している。マイクともやったが、全く違う攻撃の仕方をしなければいけない。私は(普段)グラウンダーの要求をしていて、空中のボールはほとんど要求しない。このようなトライをしていかなければいけない。最終予選でこのプレーを出すべきか、私は躊躇している。フレンドリーではトライしてもいいかなと。そのため、キリンカップでマイクを呼んで確かめた(実際は、3月のW杯2次予選で招集)。マイクを選んだときには、われわれは彼に応じたプレーをしなければならない。でないと、彼がプレーできないからだ。

 攻守にわたってボールに関わる選手を私は要求している。そのためのチョイスだ。長澤はずっとこのようなパフォーマンスを続けてくれれば、例えばマイクより運動量が多いので、より攻撃の組み立てに参加できる、そんな感じもする。長澤も今後、ここに加わっていいでしょう。ただ最終予選で参加させるには少しリスクがあるのかなと。このシチュエーションでいろいろな人がチョイスに乗ってきたが、試合後にいいのか分かる。私が選んで、本当にいいのかよくないのか。そして、テクニカルスタッフとディスカッションを始める。選手のチョイス、ここが一番デリケートな時間になる。3時間くらい、皆から意見を聞く。われわれがいいことを続けたかは分からないが、結果だけが真実だ。

 われわれは1試合負けて、いろいろな疑問が出てきたわけだが、先ほどおっしゃったような「言い訳」といったことも出てきたわけだ。それぞれの意見があっていいと思う。皆さんから全部質問を受けたいし、私がミスを犯すこともある。最後は私のチョイスになるが。負けた時は私を批判してもらいたい。私の責任で選手を選んだわけだから。若い選手を選んだのも同じで私の責任。彼らのプレーが悪かったら、私の責任だ。

 やりたいことは私がすべて把握している。間違えることもあるし、間違えないこともある。ただ、ネガティブな面で考えられても困る。向上させなければならない、いろいろなことがある。統計上、考えなければいけないこともあるだろう。すべて統計はオープンになっている。守備の厳しさも伸ばさなければいけないし、得点率も伸ばさなければいけないし、メンタル面ももっと強くならないといけない。皆さんもいろいろと判断ができると思う。日本がどのようなクオリティーをもたらしたかという分析もできると思う。18試合くらいこなしたのだから。

 前半悪かったのは(昨年10月の)イラン戦、シリア戦だろうか。それ以外の展開は、かなり良かったと思っている。日本とイラクの試合を見てほしい。特に前半は本当に素晴らしい。非常にでなくて、エクセレントだ。選手にはなかなかネガティブにはなれない。励ましていくことが大事になってくる。本田に関しても岡崎に関しても香川に関しても清武に関しても、先発じゃないからサヨナラというふうにはならない。7年、8年日本に寄与してくれた選手を簡単に排除はできないし、メンタル的にチームが壊れてしまう。「君たち出ていないけれど、信頼しているよ」という選手へのメッセージだ。そして、グラウンドで返答を待つ。メンタルが大事だというのはこういうことだ。

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