よくぞ間に合った、ジュエラー 「競馬巴投げ!第128回」1万円馬券勝負

乗峯栄一

OWSの実況が大変だ

【写真4】オープン・ウォーター・スイミング、誰が誰だか分からない 【写真:乗峯栄一】

 もう一つのクエスチョンは「オープン・ウォーター・スイミング」という種目(写真4)だ。「競泳はとっくに終わったんじゃなかったか? あ、そうか、トライアスロンか」などと思ったが、トライアスロンの水泳ではない。海や湖で10キロメートルほどの距離を2時間ほどかけて泳ぐ、北京オリンピックあたりから始まった新種目らしい。

 写真4など見ると、カヌーやボートが目立つが、別にカヌーやボートの競技ではない。それはすべて安全のための伴走船で、中にイルカのように黒い頭だけが見えているのが選手だ。

 日本でも遠泳というのは昔からあるし、外国でも「ドーバー海峡横断」などの遠泳はあるようなので、立派なスポーツだとは思うが、これは何が大変といって、実況が大変だ。特に今回のように海でやると、波はあるし、集団は広がるし、とにかく実況は各選手の帽子に頼るしかないのだが、同じような帽子は多いし、その帽子すら波に見え隠れして、何が何だか分かりゃしない。

「あ、いま集団から一人抜け出しましたが、これは誰でしょうか? 続いて2番手、3番手と抜け出してきましたが、これはさあ誰でしょう。有力視されている××選手はまだ集団の中にいるようですが、集団のどのあたりなのでしょうか。日本選手も集団の中のようですが、さあ、どこでしょうか」

 たぶんアナウンサーのせいではない。映像を見ながらの実況だと思うので、これは仕方ないところもある。選手の頭の上に「ハタ坊」のように自国の国旗を付ければ分かりやすいとも思うが、そんなものを付けると泳ぎにくいんだろうか。

 伴走船から給水を受ける場面が何度かあるが、容器を受け取ると、そのときだけラッコのように仰向けになって水を飲む。だいたい泳いで息するだけでも大変だろうに、途中で水飲んだり、バナナ食べたり、あんたら、曲芸師か。

 いいスポーツだとは思うのだが、ただ実況がなあ。

 これがもし競馬なんかだったら大変だ。「あ、いま一頭抜け出しましたが、何という馬でしょうか。2番手、3番手と続く馬もいますが、さて、これは何でしょう。本命馬××はまだ集団の中のようですが、はたして集団のどのへんでしょうか? みなさん分かりますか」

 吹雪の中のレースなら仕方ないが、毎回毎回こんな実況だったら、客の暴動が起こる。

 次の東京オリンピックでは、水に入るスポーツは日本文化を尊重し、浴衣を着て登場する。水に入っても誰だか分かるように「おそ松くん」を読んで「ハタ坊」を勉強する。この二つの建設的提案を行いたい。

2/3ページ

著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント