成功する選手に見られる共通点は? 本音で語らうJリーグ 中村憲剛編

木崎伸也
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提供:(公社)日本プロサッカーリーグ

Jリーグ村井満チェアマン(左)と川崎の中村憲剛(右)が「Jリーガーのメンタリティー」について持論をぶつけ合った 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 Jリーグでは10代で天才と呼ばれた選手が壁にぶつかることが多い一方で、逆に若手時代無名だった選手が代表まで駆け上がるケースが少なくない。川崎フロンターレの中村憲剛も後者のひとりだ。

 プロで活躍できる選手と、そうでない選手の差はどこにあるのか。村井満チェアマンはJリーガーのキャリアについて独自の調査を行い、ある結論に達した。

 対談の後半は、村井チェアマンが中村に持論をぶつけ、「Jリーガーのメンタリティー」について考える。

村井チェアマンが選手の見解を聞きたかったこと

ビジネスマンとしての考察を、「選手の立場から意見を聞きたかった」と話す村井チェアマン 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

村井 選手の立場から、意見を聞かせてほしいことがあります。憲剛選手もプロになったとき、Jリーグの新人研修に参加しましたよね?

中村 はい、3泊4日くらいの研修がありました。あまり憶えていませんが(苦笑)。

村井 会社で言えば、入社式のようなもので、そこでチェアマンのスピーチがある。僕自身、選手だったわけでも、クラブの社長だったわけでもない。いったい何を話そうかなと悩んだ。

 そこで過去10年間の選手のデータを調べてみることにした。2005年に入った選手が、15年までの10年間にどうなったか、彼らが歩んだキャリアを調べたんです。さらに活躍している選手については、契約担当者、指導者、クラブ関係者に「どういう能力が優れていたか」、約50項目をつくってアンケートしました。ちなみに05年にJリーガーになったのは、本田圭佑選手、岡崎慎司選手、西川周作選手らです。

中村 それはおもしろい調査ですね。

村井 そのアンケートの上位3つの中に、「傾聴力」が入っていた。

中村 話を聞く力ですね。

村井 他には「自己啓発力」。自分自身で高めていく力。あとは聞く力と矛盾するようだけど、「主張する力」。まとめると、傾聴して、自分の中で自己努力を重ね、それを主張する。その3つの力です。

 サッカーは理不尽なスポーツで、けがで長期間試合に出られなくなることもあれば、クラブで活躍しても代表に呼ばれないこともある。頑張りが報われるか、分からない世界です。その理不尽な世界で10年間生き残ってきた人は、成長するためにどうすればいいかを人に聞いて、自分の中に落とし込むことができ、なおかつ言われた通りにやるだけでなく「俺はこうしますよ」って主張できる。

 とにかく試練が多いけれど、そこから這い上がる。僕は総称してリバウンドメンタリティーと呼ぶことにしました。前振りが長くなりましたが(笑)、この分析は憲剛選手から見てどう?

村井チェアマンの調べでは、過去10年では「傾聴力」「自己啓発力」「主張する力」を兼ね備えた選手が活躍しているという 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

中村 すっと耳に入ってきました。自分の経験と照らし合わせても、正しいと思います。もちろんプロに見合うだけの技術や体力は必要ですが、やっぱり心というか。気持ちの強さが大事だと思います。

 技術は練習すればするほど伸びる。でも向上心がないと、それを継続できない。競争があるので、心が折れてしまう選手もいる。村井さんが名前を挙げた圭佑やオカは、日本代表に入ってきたときに確かにその3つを持っていましたね。

村井 やっぱりそうか。

中村 圭佑もオカも素直でしたね。逆にダメになっていく人は、プライドが高くて人の話が聞けない。自分にはこういう型があるからと言って、監督やコーチのアドバイスを生かすことができない。そういう選手は1度の挫折で簡単に心が折れて、いつの間にかフェードアウトしてしまう。

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著者プロフィール

1975年、東京都生まれ。金子達仁のスポーツライター塾を経て、2002年夏にオランダへ移住。03年から6年間、ドイツを拠点に欧州サッカーを取材した。現在は東京都在住。著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『革命前夜』(風間八宏監督との共著、カンゼン)、『直撃 本田圭佑』(文藝春秋)など。17年4月に日本と海外をつなぐ新メディア「REALQ」(www.real-q.net)をスタートさせた。18年5月、「木崎f伸也」名義でサッカーW杯小説『アイム・ブルー』を連載開始。

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