五輪世代加入で膨らむセレソンへの期待 ジェズスは鮮烈なA代表デビューを果たす

沢田啓明

常に代表に招集されている「ガビゴル」

常に代表に招集されている「ガビゴル」ことガブリエウ・バルボーザ(9番)。近い将来、出場機会が与えられるはずだ 【Getty Images】

 この2試合では出番がなかったが、このところ常に代表に招集されているのがFWガブリエウ・バルボーザだ。ネイマールと同様、名門サントスの下部組織出身で、主として右サイドに陣取り、スピードとテクニックを生かしたドリブルで突破すると、中へ切れ込んで強烈なシュートを放つ。「ネイマール2世」と呼ばれるが、同年代の頃のネイマールより得点力は上で、「ガブリエウ」と「ゴール」を組み合わせた「ガビゴル」という名前が国内では通称となっている。

 五輪後は複数の欧州ビッグクラブからオファーを受け、伝えられるところによると移籍金2800万ユーロ(約32億円)でインテルへ移籍。この2試合では、同じポジションでプレーする先発のMFウィリアン(チェルシー)が不調で、MFフィリペ・コウチーニョ(リバプール)が交代出場したが、近い将来、ガビゴルにも出場機会が与えられるはず。そのときに結果を出せば、代表レギュラーの道が開けてくる。

 ロドリゴ・カイオは、23歳という若さに似合わず、常に冷静でクレバーなプレーをする。相手攻撃陣の意図を的確に読み取り、鋭い出足でパスをインターセプトするのが真骨頂。DFとしては決して大柄ではないが、優れたポジショニングと抜群のジャンプ力で、空中戦にも強い。常に周囲の状況を的確に把握しており、相手ボールを奪うと精度の高い縦パスを供給し、前にスペースがあれば巧みなドリブルで持ち上がる。CBのみならず、ボランチとしても高い能力がある。潜在能力の高さはクラブでの試合とリオ五輪ですでに証明済みで、将来セレソンの守備の主軸になれる能力を備えている。

チッチ監督は五輪代表を高く評価

チッチ監督はチーム一丸となって戦い、母国に金メダルをもたらした五輪世代を高く評価している 【写真:ロイター/アフロ】

 今回は招集されていないが、リオ五輪でレギュラーとして活躍し、すでにA代表歴もある左SBドグラス・サントス(ハンブルガーSV)は、確かな守備力と積極的な攻撃参加が持ち味の選手だ。当面、A代表のこのポジションにはマルセロ(レアル・マドリー)とフィリペ・ルイス(アトレティコ・マドリー)がいるが、今後2人を脅かす存在となりそうだ。

 また、まだA代表には招集されていないが、リオ五輪で途中からポジションを獲得して重要な役割を果たした23歳のCFルアン、22歳のワラシ(いずれもグレミオ)も近い将来のセレソン入りが予想されている。

 ルアンは五輪で5試合に出場して、3得点2アシストを記録。前後左右に流れて味方選手との連係からチャンスをつくり、果敢にゴールを狙う。ネイマール、ガブリエウ・ジェズスらとの相性が抜群で、いずれA代表入りして出場機会を与えられるのではないだろうか。ワラシは、身長188センチの大柄ボランチ。1対1が非常に強く、カバーリングも巧みで、精度の高いパスで攻撃の起点となることができる。ボランチのカゼミロを追いかける選手の1人だ。

 チッチ監督は、五輪グループリーグの最初の2試合(対南アフリカ、イラク)でいずれもスコアレスドローという結果に終わり、地元メディアと国民から酷評されながらも、チーム一丸となって失地挽回し、苦闘の末に栄冠を手にした五輪代表を非常に高く評価している。

 今後、ブラジル代表はこの2試合で起用された選手が中心となって18年W杯南米予選を戦うことになるだろう。五輪を経験した若手がさらに成長し、チームに加わることで中堅、ベテランと化学変化を起こしたら、とてつもないチームができるのではないかという期待が大きく膨らむ。

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著者プロフィール

1955年山口県生まれ。上智大学外国語学部仏語学科卒。3年間の会社勤めの後、サハラ砂漠の天然ガス・パイプライン敷設現場で仏語通訳に従事。その資金で1986年W杯メキシコ大会を現地観戦し、人生観が変わる。「日々、フットボールを呼吸し、咀嚼したい」と考え、同年末、ブラジル・サンパウロへ。フットボール・ジャーナリストとして日本の専門誌、新聞などへ寄稿。著書に「マラカナンの悲劇」(新潮社)、「情熱のブラジルサッカー」(平凡社新書)などがある。

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