日本ラグビーの未来を担う山沢と森谷 バーンズが見た2人のTLデビュー

斉藤健仁

森谷「どのポジションでもラグビーがうまくできれば」

デビュー戦で初トライを奪うなど奮闘した森谷 【斉藤健仁】

 一方、13番としてのポテンシャルを大いに発揮したのが「思ったよりもケガの治りが早かった」というCTB森谷だった。SO、WTB、FBとしてのプレーは記憶にあるが、アウトサイドCTBとしての印象はさほどなかった。だが、前半28分にはバーンズとのコンビネーションで初トライを挙げて、さらに果敢にタックルを繰り返し、トップリーグで十分に通用するパフォーマンスを見せていた。

 13番のポジションについて聞くと「楽しくできています。ディーンズ監督には『ラグビーをやれ』と言われているので、そこまでポジションにこだわりはありません。どのポジションでもラグビーがうまくできればいいかな」と試合は負けたものの、8カ月ぶりの公式戦で、80分フルタイムで出場できたこともあり、笑顔も見せていた。

 今後もパナソニックのBK選手の中心選手として活躍するポテンシャルを見せるには十分だった。この試合で大きな自信をつけた森谷は「ケガは怖かったですが、今日はラグビーに真剣に、集中してできたかなと思います。コンディションは100%ではないですが、上がってきました。求められているものもありますが サポートされている部分も多いので、周りの力になれるような選手になりたい」と先を見据えた。

バーンズ「山沢は私よりスキル面ではうまい」

元豪州代表のバーンズは、2人の若き才能を評価した 【斉藤健仁】

 この2人とフロントスリーを組んだインサイドCTBのバーンズは、「(2人は)良くやってくれた」と称えたが、若き才能のことをどう評価しているのか聞いてみた。ディーンズ監督には「若い選手を育てることは役割の一つ」と言われているという。

 まず山沢に関してバーンズは「今日のような試合は、自分たちが前に出られていない中、10番としてプレーするのは難しかったと思います」とねぎらった。ただ期待をかけることも忘れていなかった。

「山沢は10番でプレーして、外国人選手に指示されて、難しい部分もあったと思いますが、私よりもスキル面ではうまいので、私自身もそうでしたが、今後経験を積むことで、ボールを早く出したり、試合をコントロールしたりといった部分を学んでいってほしい」

 また森谷に関してバーンズは「前十字じん帯断裂から復帰して3試合目ですが、非常に良いパフォーマンスだったと思います。強いボールキャリア(ボールを持って前進すること)が良かったです。山沢もそうですが、ケガから復帰して、初めてこういった環境に放り込まれてよくやっていると思います」と評価した。

ディーンズ監督「育成と強化は同時に」

森谷(左)のトライを祝福する内田(中央)、山沢(右) 【斉藤健仁】

 最後に、ディーンズ監督に2人について聞くと「山沢は、これから長いキャリアを積んでいく、将来性のある選手です。(ケガから)グラウンドに戻ってきたことが素晴らしい。しっかりチャンスもつくれたと思います。森谷も大きなケガから戻ってきて、そういった状況の中でしっかりプレーしてくれました。またこの試合では山沢、森谷、テビタ・ツポウ、藤田慶和、長谷川峻太、そして(新外国人選手の)タンゲレ・ナイヤラボロと6人の選手がワイルドナイツでトップリーグ初出場を果たしました。この選手たちが、長くチームのために戦い、練習を通してコンビネーションが良くなっていくと思います」と若手選手たちの成長に期待を込めた。

「育成と強化は同時にやらないといけない」と山沢、森谷を先発させたディーンズ監督は言う。2人とも2019年のワールドカップで中心選手となれるだけのポテンシャルを今後も見せ続けて、いち早く、日本代表に選ばれるような選手に育ってほしいところだ。
 開幕戦は少し明暗が分かれた形になったが、今季、パナソニックの若きBK2人のパフォーマンスを楽しみに観戦したい。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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