村田諒太、“もっと上”へと続く快勝 次戦からミドル級王座へ険しい道が始まる

杉浦大介

王座奪取には強豪との戦いに欠けている

村田にとってはここから先が本当の戦いとなっていく 【Getty Images】

 ただ……そうだとしても、ここでの回り道は村田にとって必要なものでもあるのだろう。目標がタイトル挑戦ではなく、王座奪取であるならなおさら。頂点に挑む前の前哨戦がタドーニッパー相手では、やはり少々物足りなさすぎる。

「(世界に向けて)8合目くらいまで来ているんじゃないですか。ただ、前も言いましたけど、この世界は僕だけの力ではできない。いまゴロフキンという化け物のチャンピオンがいて、(タイトルは)彼が全部持っている状況。僕はウェイティングサークルに入っていないのが現状ですよね。まずそこまで登っていかなければいけない。8合から10合に上がるところが一番難しいと思っていますんで、登れるように、しっかり体力をつけていきたい」

 そんな言葉を聞く限り、聡明な村田本人も自分に足りないもの、必要なものを理解しているようである。タドーニッパーに圧勝し、これで3連続KO勝利。格下をねじ伏せるたくましさをベガスでも見せられたのは今回の収穫だったが、真の意味でワールドレベルの強豪としのぎを削る経験がプロでは絶対的に欠けている。

次戦は11月に世界ランカーとか

 本田会長によると、世界戦がまとまらなかった場合、次は11月頃にテストマッチを予定しているという。「ランカーとやらないといけない」という会長の言葉通りなら、プロモート契約を結ぶトップランク社はついにバリバリの世界ランカーを相手に用意してくるはず。この一戦こそが、村田にとって本当のリトマス紙となる。世界戦の舞台に送り出すのは、このテストの後でも遅くはないはずだ。

「近い将来に世界タイトル戦ができるように頑張りたいと思います」

 23日の興行後、全体会見の席に呼ばれた村田はそう語った。その目標に向けて一歩近づいたのは確かだが、まだまだやるべきことは残っている。ミドル級という階級ゆえに道は険しいが、それゆえに大きな価値はある。2度目のベガスが終わり、3度目の機会が訪れたとき、ついに頂への“9、10合目”に足を踏み出し、村田は真の勝負の時間を迎えることになるのだろう。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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