頂上への電車(ピークトラム)お静かに 「競馬巴投げ!第127回」1万円馬券勝負

乗峯栄一

男女トラブルで悩んでいる人、いま外に出てみなさい

[写真4]ダンスアミーガは夏に強いイメージ 【写真:乗峯栄一】

「うわ、すごーい!」と目を閉じて大声を出した女も「ごめんなさい、好きな人が出来たの」と言い、ハンドバッグ振り回して出て行き、帰ってこなくなる。

「ほんとに何もしないのね?」「ほんと何もしない、休むだけ」と言い合って一緒にホテルに入った女が、「ほんとに何にもしないのね。いや、出来ないのね」と言い捨ててパンツがばっと上げ「いいのよ、気にしなくて」と髪掻き上げて出て行くと、これも二度と帰って来ない(これは体験上はっきり言える)。

 この、ほんの目の前にいる女の気持ちをどうやって測ればいいんだということになる。

 お互い目を見開いたまま交接器だけ接触させ、「はい、どうも」「おさかれさま」と言って分かれるような、そんな昆虫類や草食動物のようになれば、恋愛のゴタゴタはなくなるのかもしれない。

 肉食獣のように、嬉しいのか、イヤなのか分からないのに、メスが目を見開いたまま「グーォ」と唸るのもいいかもしれないし、ガラパゴスゾウガメのようにオスが雄叫びを上げるのも、いいかもしれないが、「お前、あのとき声出したじゃないか」「あなたこそ、断末魔のような声を上げたくせに」と、そこだけ取って悶着が起こる可能性もある。

[写真5]ピークトラムで橋口慎介厩舎の初重賞勝利を期待 【写真:乗峯栄一】

 京大霊長研が見つけた、人間が人間であるための条件・「貸してやる・返さないといけない」精神がトラブルを減らすだろうか。「あなたはエサを取るための棒のようなものを貸してくれた、何だか気持ちよかった」「きみはそのお返しに奥の方にエサの入った穴のようなものを返してくれた、あれも気持ちよかった」という、こういうのが人間らしい麗しいやりとりなのだろうか。

 しかし[房事の前後一日は言葉、叫びを発してもいけないし、マブタを閉じる、泣く、口を開くなどの表情を変化させること、まかりならん]という民法を作ってみたらどうだろう。きっと男女トラブルは驚異的に減っていくと思うのだが。

 男女トラブルで悩んでいる人、いま外に出てみなさい。あちこちの街路樹にクマゼミが重なっているから。そして「お前、あのとき“あなた一筋よ”って言ったじゃないか」「もっとすごーい人見つけちゃったの、ごめんなさい」とパンツぐいっと引き上げているメスのクマゼミを何千匹と見つけることが出来るから。

性的なものと走ることに関係はないのかと調べてみることだ

 競馬にもそれがある。「馬券が当たらん。馬が分からん」と思ったら、馬の骨格、内蔵、心理を調べるんじゃなくて、後ろを向いて、ほかの走るもの、ゴキブリやらアリやらフンコロガシやら、あるいは光や音波やら、すべての走るものたちが何を目標に動いているのか、特に性的なものと走ることに関係はないのかと調べてみることだ。

「イヤーン、もう凄いんだから」と言いながら走っている生き物は相当数いるはずだ。

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著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

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