【UFC】 “王座戦線サバイバル”に黄信号 ホリー・ホルムが負けられない理由
ラウジーを破り、一躍時の人となったホリー・ホルム(左)だが、女子バンタム級戦線の崖っぷちにいる 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】
3月の「UFC 196」ではホルムが初防衛に失敗し、ミーシャ・テイト(米国)が戴冠したものの、7月の「UFC 200」ではテイトもようやく手に入れたチャンピオンベルトを守り切れず、アマンダ・ヌネス(ブラジル)が新女王となっている。
「ロンダ殺し」ホルムの誤算
UFC史上最大の大番狂わせを演じたホルム。それは“ホリー・ホルムの月”ができたほどだった 【Getty Images】
ホルム株は一気に上昇。試合後のホルムが一連のメディアツアーを終えて地元アルバカーキに戻った際には祝勝パレードに押し寄せた2万人の群衆がホルムの涙のスピーチに酔いしれた。ニューメキシコ州ではホルムの凱旋(がいせん)パレードが行われた12月7日(現地時間)を“ホリー・ホルムの日”として認定、さらにアルバカーキー市は11月を“ホリー・ホルムの月”に認定したほどである。
“ホルムvs.ラウジー”再戦への期待は高まる一方で、当時米スポーツテレビ局『ESPN』の番組に出演したUFC会長のデイナ・ホワイトは、「2016年7月の『UFC 200』でホルムとラウジーの再戦を行う。この試合の再戦を組まなかったら、プロモーターとしては失格だ」などと語っていたのだ。実際、ホワイトはアルバカーキーまで出向き、試合間隔があいてしまうことになるだろうが、次の試合はラウジー復帰まで待ってほしいとホルムに説明したとも伝えられる。
しかし、その後ホルム陣営は「UFC 200」まで待つことなく試合を行いたいと強く主張。ラウジーの「UFC 200」参戦がスケジュール的に困難になったこともあり、結局「UFC 196」でテイトを挑戦者に迎えて防衛戦を行うことになる。フットワークとプレッシャーで試合をコントロールしていたように見えたホルムであったが、結果的にはテイトの粘りのグラウンドワークに不覚を取ってしまう。
この試合の直後に『ESPN』の番組に出演したホワイト会長は、「こんなことになってホリーが気の毒だ。どんなチャンスを失ったのか、本人はちゃんと分かっているんだろうか。取り巻きに何でも任せすぎなのではないか。彼女はロンダ・ラウジーを倒したのだ。もっともっと大きなビジネスにできただろうに」とホルム陣営の判断を批判、新王者テイトの次戦については「今年終わり頃にロンダと戦うことになる」と語っていた。
ところが4月に入り、テイトの次戦は年末のラウジー戦でもなく、ホルムとの再戦でもなく、「UFC 200」でのヌネス戦となることが発表された。ホルム陣営はテイトがホルムとの再戦を回避してヌネスを選んだと批判。これに対し、テイトはUFCからホルム戦の提案は受けておらず、オファーされたカードを承諾しただけであり、ホルムには完勝したとして再戦の必要はないなどと反論。時ならぬ場外乱闘が繰り広げられていたのだ。
ラウジー復帰でざわめく混沌の女子バンタム級戦線
ラウジーの次戦は誰とカードが組まれるのか? 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】
「次にロンダと戦うのは誰なのか?」という興味と利益を軸に、不在のラウジーがやはりこの階級を動かしてきたのだ。事実、ホワイトはラウジーの復帰戦の相手は、その時のチャンピオンになると明言している。今のところ、女子バンタム級のベルトには“ロンダへの挑戦権”の意味合いが強いのだ。
そのラウジーは7月13日(現地時間)にTwitterなどで動画を公開。女優のように着飾ったロンダが、衣装や化粧を1枚ずつはぎ落とし、ファイターとしてのロンダに変ぼうしていく様子を描いた動画に、次のようなナレーションが加えられ、復帰が近いことを強く示唆する内容となっている。
「完璧であるとはどういうことか。完璧だと本当の試練を味わえない。完璧だと批評家を黙らせられない。完璧だと汚名返上ができない。だから、私は完璧じゃなくて構わない」
相手はベテラン・シェフチェンコ
シェフチェンコは前回の試合ではヌネスに敗れているものの、キックボクシング戦績58勝2敗1分のベテランだ。UFCはここ4大会のうち3大会で女子戦がメインイベントを飾っているが、そのラストを締めるのは立ち技のエキスパート同士の緊迫した打撃戦となりそうだ。