Rソックス・上原、代役クローザーで躍動 再び“伝説の秋”の主役になれるか!?

杉浦大介

キンブレルの離脱で上原がクローザーに回った。ヤンキース戦では2戦連続セーブの活躍 【Getty Images】

 上原浩治がゲームを締めくくり、踊るようにガッツポーズ――。近年のレッドソックスファンには見慣れたシーンが、オールスターブレイク直後、真夏の夜のニューヨークで連日展開された。

 前半戦で17セーブを挙げた抑えのクレイグ・キンブレルが11日(現地時間)に左ひざに手術を受け、代わりのクローザーに上原が指名された。41歳の代役守護神は、敵地ヤンキー・スタジアムで行われた16、17日のヤンキース戦で連続セーブ。この2戦とも3者凡退と内容的にも完璧で、これでクローザー復帰以降は4連続セーブ成功となっている。

「僕らは勝つしかないんで、(勝って)良かったと思います。キンブレルが帰ってくるまでの辛抱なんで。1カ月くらい頑張れるようにしたい」

 17日の試合後、そう語った日本人右腕の横顔には充実感がにじんだ。

 クローザーのやり甲斐はチーム状態に左右されるもので、なかなか出番がない低迷チームの“切り札”は宝の持ち腐れに過ぎない。その点、今季のレッドソックスはア・リーグ東地区首位のオリオールズに2ゲーム差の2位。ワイルドカード争いではトップと好位置につけている。

 18日こそヤンキースに敗れたものの、それまでオールスターを挟んで6連勝と好調だ。生きの良い若手野手が続々と芽を出し、2年連続で地区最下位に沈んだ名門チームはようやく復活気配。シーズン後半に向けて、ブルペンの一角を担う上原も緊張感あふれるマウンドに立つ機会が多そうである。

修羅場をくぐってきた経験を監督も信頼

 もっとも、今季の上原は38試合で2勝3敗6セーブ、防御率4.54(17日終了時点)という数字が示す通り、今季ここまでの上原は決して快調ではなかった。ワールドシリーズを制した2013年はシーズン通じて5本だった被本塁打はすでに8本、四球は13年と同数の9。ニューヨーク滞在中、上原本人も切り札スプリッターの不出来を盛んに指摘していた。

 そんな影響もあってか、レッドソックスはブルペンのテコ入れを目論み、8日に変則派右腕のブラッド・ジーグラーをダイヤモンドバックスから獲得したばかり。今季18セーブ、防御率2.68というジーグラーの数字を見れば、キンブレル離脱後はこの36歳のサイドハンダーがクローザーを引き継いでも不思議はなかった。にも関わらず、チームが重圧のかかる大役を上原に託した理由はどこにあったのか。

「(登場のタイミングが定まっている)クローザー役では、フィジカルよりも精神的な意味で準備できるのがコウジには大きい。アドレナリンが湧き出て、気持ちの準備も整っている。誰と対戦するかもわかっている。クレイグが故障離脱した今こそ、コウジに力を発揮してもらうとき。ここまではよくやってくれているね」

 ヤンキースとのシリーズ中、上原がクローザーとして活躍できる理由をジョン・ファレル監督はそう説明していた。確かにルーティーンを守れるという意味で、登板機会が基本9回と決まっている利点は大きいのだろう。“準備がしやすい”、“3点差なら2点までは構わないという気持ちで臨める”という2つを上原も抑えの特色として挙げていた。

 熱狂的なファンを持つボストンのような場所では、9回のマウンドを託される重圧は並大抵のものではない。そんな状況下で、2013年以降はこの街で修羅場をくぐってきたベテランの経験が生きてくる。ファレルは“アドレナリン”という言葉を使ったが、意気に感じるタイプの上原は9回の方が集中して投げられるのかもしれない。

 これらのすべてを考慮して、就任4年目の指揮官は上原を代役クローザーに据える選択したのだろう。そして、ニューヨークでの躍動感と球のキレを見る限り、そのチョイスはまずは正しかったようにも思えてくる。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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