笹倉康誉、「11番」の葛藤とプライド 「まだ全然満足はしていません」

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攻守両面、キック処理で存在感を示す

笹倉にもトライのチャンスはあったが、パスが回らず。スコットランドに5点差で敗れた 【写真:赤坂直人/スポーツナビ】

 そして迎えたスコットランドとの第2戦、笹倉は要所で好プレーを見せた。

 前半29分にスコットランドのキックオフを相手WTBトミー・シーモアに直接キャッチされたが、笹倉のスマザータックル(相手をボールごと抱き込んで倒す)でピンチを防ぐ。
 日本人ラグビー選手にとって慣れないナイターでの試合だったが、ほかの選手が苦戦する中でキック処理はノーミス。攻撃では相手FBの背後を突くキックで距離を稼ぎ、連続攻撃の際にはSHに代わってボールをさばくなど持ち味の万能性を発揮した。
「自分の良いところは器用なところだと思うので、今日はそのあたりを生かせたと思います。WTBとして走り切るスピードはありませんが、自分がやれることを見出せている感じがあります」

 後半24分には「チームの決め事として順目に攻めた」という連続攻撃で相手ゴールに迫り、笹倉は右ライン際に大きく広がってボールを呼んだ。「あれは欲しかったですね。スペースがあったのでボールが来ればトライできたと思います。ただ、(小野)晃征さんも目の前が空いていたから自分で行ったということでした(結果はトライならず)。あそこで取りたかったですね」

「つなぎ役としての良さを出したい」

本来のポジションとは違っても「つなぎ役として良さを出したい」と語る 【写真:赤坂直人/スポーツナビ】

 この日のプレーの安定にはメンバー編成も役立ったと語る。「14番がマレ・サウで力強くボールキャリーできる選手だったので、役割がはっきりしたというか、僕はつなぎで彼らを生かすことに集中できました。(第1戦で同じWTBだった)ミフィ(パエア ミフィポセチ)も僕と同じで本来はつなぐタイプなので、スピードで勝負できる選手と組んだ方が互いに良さが出ると思います」

 王者パナソニックの最後の砦として、多彩な能力を発揮してきた笹倉。初めてスーパーラグビー、日本代表で戦っている27歳は、さらにプレーの幅を広げ、心身両面でたくましさを増している。

「うまくいかずに考え込んだこともありました。それでも、自分の良いところを出せるようになって自信もついてきました。『ほかの選手をWTBにした方が良い』という声もありますが、負けずにつなぎ役として良さを出したいですね。まだ全然満足はしていません。もっとできると思っています」

(取材・文:安実剛士/スポーツナビ)

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