じっくり前進、高橋純平がプロ初登板へ 鷹詞2016〜たかことば〜

田尻耕太郎

プロも一目置く投球フォーム

高校時代からのインステップ気味のフォームは変えずに実戦に臨む 【写真は共同】

 プロで戦うための準備も、ひっそりと行ってきた。

「高3の昨年はセットポジションで投げていましたが、ノーワインドアップに変えました。セットで投げる方が本当は引き出しが多いんです。足の上げ方を長めにしたり、クイック気味にしたりして投げていました。でも、そのごまかしは高校生には簡単に通用しても、プロ相手だとわからない。まずは自分のベストボールを投げられるようにしたい」

 また、18日の実戦形式では、1軍経験も豊富な明石健志を相手に投げた。ストレートで空振りを奪う場面もあった。それよりも2ボール0ストライクから、緩いカーブを操って簡単にストライクを奪える投球術は、かなり魅力的に映った。並の若手ではできないピッチングだ。

「僕もリハビリ組にいてもうすぐ実戦復帰なのですが、生きた球を見ることができたのは大きいし、そのへんのピッチャーよりもいいボールを見せてもらったのは本当によかったです。ストレートは145キロくらい出ているように感じましたね」(明石)

 また、明石は、高橋の独特な投球フォームが武器になるのではないかと分析した。
「プレートの一塁側を踏んで、左足はインステップ気味にクロスして入ってくる。そんなピッチャーはあまりいないから目の錯覚を起こすんです。特にインコースのストレートの軌道は不思議な感じ。あれ? と思いましたもん」

 インステップは基本的に欠陥だとされている。若く関節が柔らかい時期はいいが、長続きはしない。1年中戦うプロ野球においても、体への負担が大きいインステップは歓迎されない。

「まずは自分の形で」という球団方針

 しかし、ソフトバンク首脳陣は、現在のところ無理にフォームをいじることはないという。

 高橋が言う。
「自分でも気にしてはいますが、今はあまり考えずにやっています。工藤監督からも『下半身が強くなれば、自然といいフォームは出来上がっていくから』と言われているので」
 リハビリ組を担当する斉藤学コーチも「まだ彼はプロの壁にもぶち当たっていない。はじめから手を加えるのではなく、まずは自分の形でやらせてみる。ある程度結果が出たり、本人からのエクスキューズがあればそれから指導していく」と話していた。

 これもソフトバンクの球団方針の一つ。これで大成功を収めたのが柳田だ。入団したての頃は上半身ばかりに頼っためちゃくちゃなバットスイングだったが、あえてそれを放任して振り込ませたことで、柳田自身が欠点に気づき、改良していった。

 高橋は球界最高峰の育成環境とそのメソッドに育まれている。今季の目標は「1軍で1勝」。そして将来的には「生涯この球団でエースを張れるようになりたい。1軍に早く上がりたいけど、下積みをしないと長いスパンで活躍できないと思っています。一番トシをとっても、このチームでエースでいられるよう頑張りたい」と夢を語る。

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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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