五輪中間年に見えた女子フィギュア ジャンプレベルは同等、個性の時代に

野口美恵

浅田の真なる復活は来季以降

1年の休養から明けた浅田の真なる復活は来季以降だろう。シーズン終盤から手応えを感じており、すでに「平昌五輪を目指す」と宣言した 【坂本清】

 ではこの3カ国を中心に、平昌五輪での日本の勝算はどれほどあるのだろうか。

 まず1年の休養から明けて復帰した浅田は、この4月に“平昌五輪を目指す”と宣言、3度目の五輪をゴールと定めている。今季はグランプリ初戦となる15年11月の中国杯でトリプルアクセルを成功させて優勝し、復活を印象づけた。ところが続く試合からは好不調の波があり、世界選手権は自己ワーストの7位に終わった。

 しかし心配には及ばない。浅田の真なる復活は来季以降だろう。中国杯で好成績だっただけに、“復活”したあと“苦しんだ”という印象になったが、実際には本人のなかでの手応えは、シーズン中に上昇していた。

 中国杯では、「今の自分の状態は、日によって良い時も悪い時もある。心から『試合に戻りたい』と思ったことが、試合での良い演技につながっている」と技術面にまだ波があることを告白。ミスがあり3位となった全日本選手権では、「試合を重ねるごとにワクワクが薄れて、自分の思っている演技をできないことが続いている」と、技術よりも精神面での課題を挙げた。そして7位となった世界選手権は円熟味ある演技を見せると、「今季スタートした時点では『間に合うかな』という状態でしたが、そこから比べれば、自分の目指すところまでは戻ってきた。自分が表現したいものがお客さんに伝えられた」と、表現面での成長を感じていた。

 また技術面では確実な成長もあった。他の選手には難しい連続ジャンプである「3回転フリップ+3回転ループ」をNHK杯で成功させたことや、これまで修正に苦しんでいた3回転ルッツをグランプリファイナルで認定されたこと。技術的に復活・進化した部分がいくつもあった。その進化が得点につながっていくのは、来季以降だろう。あとは25歳を超えた女性にしか演じられない深みをどこまで磨けるかが、これから2年の見どころになりそうだ。

宮原が手に入れた強気の心

NHK杯以降は常に200点超えをマークしている宮原。これまでにはなかった強気の心を手に入れ、成長を感じさせた 【坂本清】

 次に宮原知子も、さらなる成長の兆しを見せている。彼女の一番の売りは安定感。今季は15年11月のNHK杯で、大きなミスなく滑りきって200点超えでの優勝。そこからは一度も200点を切ることなく快進撃を続けた。

 特に四大陸選手権では自己ベストの214.91点をマーク。この優勝で一番の成長だったのは、控え目な性格の宮原が、自ら「ずっと2位の国際大会が続いているので優勝したい」と宣言して試合に臨んだことだ。これは自らにプレッシャーをかけてその重圧をコントロールする、という新たな精神面のステップに進んだ証し。

「イメージトレーニングを毎日1回は必ずやるようにして、周りがざわざわしていても自分に集中して良いイメージを持つようにしました」と、メンタルコントロールに手応えを感じている様子だった。

 世界選手権ではミスがあり5位となったが、続くチームチャレンジカップでは自己ベストを上回る、ショート73.28点、フリー145.02点をマークした。悔しい試合の直後にベストの演技を見せるという気持ちの強さが、何よりも今季の収穫だ。技術的な安定に加えて、強気の心を手に入れた宮原。トップに食らいつく本気の闘志を見せることが、来季のブレークへとつながる。

 さらに日本女子は、若手の追い上げにも勢いがある。ジャンプの安定感や演技力などバランス良く強みのある本郷、ジャンプ力のある樋口、そして世界ジュニアで優勝を飾った演技派の本田真凜ら、バラエティー豊かな10代が、次なる日本女子エース候補として頭角を現している。

 平昌五輪まであと2年。女子は「3回転+3回転」が最難度のジャンプという状況が続くだろう。各選手とも、いかに個性を際立たせ、一歩リードしていることをアピールするか。今まで以上に総合芸術としての面白みが増していく2年間になりそうだ。

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著者プロフィール

元毎日新聞記者、スポーツライター。自らのフィギュアスケート経験と審判資格をもとに、ルールや技術に正確な記事を執筆。日本オリンピック委員会広報部ライターとして、バンクーバー五輪を取材した。「Number」、「AERA」、「World Figure Skating」などに寄稿。最新著書は、“絶対王者”羽生結弦が7年にわたって築き上げてきた究極のメソッドと試行錯誤のプロセスが綴られた『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)。

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