「少しずつ、着実に」進化する宮原知子 弛まぬ努力の末にたどり着いた目標の舞台
緩やかな成長曲線を描く
NHK杯でGP初制覇を果たした宮原知子の歩みを振り返る 【写真:ロイター/アフロ】
「NHK杯はシニアに上がってからずっと出ていて好きな大会だったので、そこで勝てたのはすごくうれしいです。また200点台を出すことは1つの目標だったので、少しではありますが、200点を超えて良かったです」
浅田真央(中京大)やアシュリー・ワグナー(米国)といった実績・経験を兼ね備えるトップ選手を破っての戴冠。さぞかし喜んだのかと思いきや、「うれしかったんですけど、なんか複雑な感じで……。ホテルに帰ってからはいつも通りの感じでした(笑)」。
本人も自覚しているように、感情の起伏はあまりない。失敗して落ち込むことはあるそうだが、それは表に出さず、寝たら忘れてしまう。試合に勝ってもはしゃいだりすることはほとんどない。優勝した今回のNHK杯や、昨シーズンの全日本選手権では、隣にいた濱田美栄コーチのほうが喜びをあらわにしていたくらいだ。
身長は149センチと小柄。よくよく考えてみると、フィギュアスケートをやるにはいろいろと不利な面があるようにさえ思える。多少なりとも身長(特に手足の長さ)があったほうが演技はきれいに見えるだろうし、感情豊かであるほうが表現力という意味では有利に働くはずだ。ジャンプに関しても、他の選手に比べて高さがやや物足りなく映る。
それでも、宮原はそうした弱点を、弛まぬ努力を積み重ねることで克服してきた。
武器は練習量に裏打ちされた安定感
歩みはそれほど急ではないかもしれない。しかし、実力がつくにつれて、成績もそれに伴って上がっている。好不調の波はほぼない。確かな練習量に裏打ちされた安定感は宮原の武器でもある。
濱田コーチ(右)も認める「練習の虫」。積み重ねた日々の努力が成長へとつながっている 【坂本清】
10月のスケートアメリカでは珍しくジャンプで転倒し、3位に終わった。NHK杯まで約1カ月。宮原は練習中と試合のジャンプを見比べて、ある悪癖に気がついた。緊張する試合では、ジャンプで早く回転しようとするあまり、頭と顔も一緒に回っていたのだ。そうするとジャンプが上がりにくくなり、転倒や回転不足の要因ともなる。練習ではその改善に努め、NHK杯での結果につなげた。