春夏連覇の大阪桐蔭4番が野球界に復帰 藤浪の同期・田端良基が語る新たな夢

高木遊

北村監督から熱心な誘い

野球復帰の場所として独立リーグも視野に入れていたというが、北村監督(右)の誘いもあり、日本ウェルネス大学北九州への入部を決めた 【写真=高木遊】

 そんな時、声をかけてきたのが日本ウェルネス大学北九州を2009年9月から(当時の名称は日本ウェルネススポーツ専門学校北九州)率いていた北村潤一監督だった。

 北村監督の熱心な誘いを受け、田端は「独立リーグに行きたい気持ちもありましたが、3年もブランクがある僕を熱心に誘ってくれたので、必要としてくれたところに行こうと決めました」と入部した。

 まだ合流して1カ月ほどだが、「いかついイメージがあったのですが、みんなに声をかけたり、時にはギャグを言ったりしてくれます(笑)。田端が来て、チームの雰囲気が明るくなりました」と、主将の根保飛鳥が話すように、すっかりチームに溶け込んでいる。この日の練習中も、年下の選手からアドバイスを請われ、熱心に培った技術を伝える田端の姿が印象的だった。

打球スピードや飛距離は出色

練習以外にも、週数日の授業やほぼ毎日行行うアルバイト勤務(夜勤含む)などもこなすハードなスケジュールだが、日々の充実が表情にも表れている 【写真=高木遊】

 同チームの選手構成は、17歳から24歳の53人。チームに溶け込めず高校や大学の野球部を退部した選手や、経済的な事情で野球が続けられなくなった選手も多い。

 そんなチームに田端が加わり、北村監督は「田端には人徳があります。偉そうにしないし、返事もよくする。周りに対して、正直“このレベルかよ”って思うところだってあるはずですが、やると決めたらやるという男気がありますね」と目を細める。

 また、「いろんな経緯の子たちに敗者復活の場を与えたいんです。みんながみんな王道ばかりを歩めるわけではありません。甲子園春夏連覇の4番だって、紆余曲折があってココにいる。それを他のメンバーも見て、同じ時間を共有する。それが財産になっていくと思うんです」と力を込めて話した。

 3年間のブランクはあるが「リストを柔らかく使ったスイングをしていて、やっぱり違うなと感じます」と北村監督が称賛するように、打球スピードや飛距離は出色のものがある。そして何より野球を心から楽しむ姿が印象的だった。

「やっぱり楽しいですよ。野球は!」

年下の選手にアドバイスをする田端 【写真=高木遊】

「社会に出て人間的に成長できました。年上の方と一緒に働いて、最初は“うっさいおっさんやなあ”と思っていたけど、自分から心開かないとしんどくなるとか、人付き合いも学びました。大きな迷惑をかけた西谷さん(浩一/大阪桐蔭高監督)や生田さん(勉/亜細亜大監督)にも“頑張れよ”と背中を押してもらい、野球ができるありがたみを感じています」

 現在の目標は「ここで活躍して企業チームに入ること」ときっぱり言い切った。もうプロは目指さないのかと尋ねると「1度野球を辞めた僕からすれば、そうなれば御の字です」と話し、最後にこう笑った。

「やっぱり楽しいですよ。野球は!」

 1度野球から背を向けた男は、社会でさまざまなことを経験し、再び野球によって輝きを取り戻し、新たな夢を描いている。そのひた向きな姿は、あの夏の田端によく似ていた。 

3年のブランクがあるも、「やっぱり楽しいですよ。野球は!」と笑顔で新たな夢を描く 【写真=高木遊】

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著者プロフィール

1988年、東京都生まれ。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。関東を中心に全国各地の大学野球を精力的に取材。中学、高校、社会人などアマチュア野球全般やラグビーなども取材領域とする。

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