有終の美ワンアンドもう一度 京都記念 「競馬巴投げ!第115回」1万円馬券勝負

乗峯栄一

浅野靖典著『廃競馬場巡礼』が驚愕本だった

 色々ネット検索していると「浅野靖典著“廃競馬場巡礼”(東邦出版)に詳しい」という文章に出会う。「浅野靖典? 浅野さんなら昨秋園田JBCのときにも会ったぞ。彼の番組“競馬ワンダラー”(グリーンチャンネル)や、競馬実況やってたときの“小ネタでゴー”(これ好きだった)の話なんか色々聞いたけど、でも本の話なんかしてなかったぞ」と首を傾げる。でも取り寄せてみると、これが驚愕本だった。

 番組「競馬ワンダラー」でも全国各地の競馬場跡を訪ねていて、それが本になったんだろうと想像していたが、全然違う。彼は番組以前から全国の競馬場跡を見て回るのをライフワーク(彼に言わせれば)あるいは病癖(ぼくに言わせれば)にしていて、「競馬ワンダラー」はたまたまその病癖とテレビ局製作意図が合致したに過ぎないらしい。

 ぼくも中央の競馬場だけでなく、各地の競馬場を回るのは好きだ。昼間ちっちゃな競馬場で馬券を買い、夜はひなびた温泉に泊まる、あれはいい。でもそれは“競馬やってる競馬場”のことだ。「そうですか、ここ昭和25年まで競馬場だったんですね」などと誰に頼まれた訳でもないのに現地を訪ねて感激し、「ああこの小道のカーブが、このブロック塀の曲がり具合が3角から4角にかけての曲線なんですね、なるほどね」と塀を撫で、写真を撮り、地図と見比べて納得する。夜は駅前の名ばかりのビジネスホテルに泊まり、すすけた部屋の壁の前に現像した競馬場跡の住宅写真を張り出して、「ああ、これがスタンドの柱の土台なんだ、盛り上がってる」と“大発見”してニッと笑うという、こんな男はめったにいない。“危ない”という気さえする。

[写真3]「廃競馬巡礼」に出てくる “橋口少年”、なぜかオデンを持っている 【写真:乗峯栄一】

 でもぼくのように、たまに競馬場跡に行ってみようという人間には、この本はバイブルのように思えた。もちろん探索にも役立つが、何より浅野靖典の偏執狂的こだわりに感激して「オレも人が見向きもしない場所に立ってニッと笑ってみよう」という気にさせる。([写真3]は「廃競馬巡礼」に出てくる、なぜかオデン持った橋口少年)

橋口調教師から弟さんといとこさんを紹介される

 誰か現地に詳しい人を紹介して貰えればと橋口調教師にもメールしてみた。日頃親しくして貰っているとはいえ、いち“マスコミ端くれ人”の個人旅行に大調教師が世話焼くかとも思ったが、すぐに返信が来た。レストランやってる弟さんや歴史資料館に勤めるいとこさんを紹介される。「二人には連絡しておきます、都城楽しんできて下さい」とまで書いてあり、またまた大感激した。

「高校見たり、競馬場跡見たりするのはほどほどにして、早めに霧島温泉着くのはどうなの?」と言う嫁に向かって「廃競馬場巡礼」と“橋口メール”を突きつけて何も言わず、じっと涙をにじませて抗議した。

[写真4]橋口調教師の弟さんが経営するレストラン「ストローハット」 【写真:乗峯栄一】

[写真5]レストラン内に飾ってあったハーツクライの優勝写真 【写真:乗峯栄一】

[写真6]都城歴史資料館・橋口調教のいとこの平田学芸員 【写真:乗峯栄一】

[写真7]歴史資料館に展示してある都城競馬場(昭和30年代) 【写真:乗峯栄一】

 よかった。競馬は全然絡んでないのに、近来になくいい旅だった。橋口調教師の弟さんもいとこさんもめちゃくちゃ丁寧・親切だった。浅野靖典の病癖と「巡礼」のおかげで都城競馬場跡地も大体分かり、写真撮ってニッと笑うことが出来た。ただ「調教師南九州説」は「邪馬台国北九州説」と同じく、いまだ確たる根拠は発見出来ず、それは残念だったが([写真4]から[写真7]はその歓待してもらった橋口調教師の弟さんやいとこさんの案内で撮ったものだ)。

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著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

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